君と寄り添う

. ページ39

「君は僕たちが作った医療ロボットだよ。君には、色んな処置や治療の能力が備わっている。まだ研究段階だけど、将来的にはたくさんの人を救ってもらう予定だよ。よろしくね？」

「…はい。その使命、全うしたいと思います。」



人間とコミュニケーションをそつなくこなせる機能は搭載してあるけど、こんなにもしっかりやりとりができるとは思わなかった。



「君の名前は、松倉海斗。…ああ、氏名を考えておいたのはいいものの、呼びやすいあだ名があるといいね。何にしようか…」

「まちゅとかどうですか？」

「え、すごい、このロボットそこまで自我があるんですね。」

「まあ、知能は人間に限りなく近いからね。じゃないと、医療ロボットとは言えないし。…うん、まちゅにしよう！」



そういうと松倉…じゃなくて“まちゅ”はニコニコと笑った。


この笑顔、たしかに人を癒す力があるかもしれない。


やっと完成させた時には午前2時を回っていて、私も如恵留先生も今日はだいぶ頑張ったと思う。


達成感と安心感で眠くなってきた私たちは、久しぶりに仮眠室ではなく自宅に帰ることにした。













翌日からは、学会への報告の準備。


実験や制作と同じくらい報告の準備は大変。


如恵留先生は実験や制作は大好きで寝る間も惜しんでやるけど、論文を書いたり報告したりするのは好きじゃないらしくて、精神的にも疲れが出てしまうみたい。



「先生、これ、実験2のレポートです。」

「ああ、ありがとう…」

「…先生、少し休まれてはどうですか？くまがすごいです。」

「平気。今休んだら報告日までに間に合わないし。」

「如恵留先生…」



だるそうに背伸びしたあとすぐにパソコンに向き直る如恵留先生に、私はもう何も言えなかった。


「たくさんの人を救いたい」と医療ロボットを開発しているくせに、自分自身の体調にはずさんなんだから…


私は如恵留先生の喘息の薬の個数を確認して、こっそり揃えておいた。

.→←貴方が世界を救うまで＿白

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す