相、雫4

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「母さん、しばらく帰らないから。」



もう俺も色々考えられる年齢だ。


いつもよりもらった額は多いけど、使いすぎないように本当に少しずつ使っていった。


食費以外の出費はできない。


友達がサッカーのスパイクを新調すれば、それをいつも横目で見ていた。


そんな生活を送って高校生になると、母さんは俺にこんなことを言った。



「この家に暮らしてるのはあんただけなんだから、家賃と光熱費水道費はあんたが払え。学費は払ってやるんだからこれくらいしろ。」



吐き捨てるように言われたセリフ。


この家に暮らしてるのはあんただけってのは否定しない。


だってもうほとんど母さんは帰ってきてなかったから。


バイトをして生活費をまかなう、実質的な一人暮らし。


サッカーもダンスも好きだったけど、部活は到底できなかった。


高校生の時給では、毎日夜遅くまで働かないと間に合わない。


もちろん、逃げたいと思ったことはある。


担任の先生に相談しようか。


友達に話してしまおうか。


公的な所に頼ろうか。


でも一度もそんなことはしなかった。


多分、母さんのことを信じていたんだと思う。


今思えば、それほどまでに豹変した母親を高校生になっても信じていた自分は阿呆だとわかる。


だけど17歳の俺は、そう信じることで自分を保っていた気がする。


今まで受けられなかった愛情はいつか受けられるはず。俺にもいつかその瞬間が来るはず。


心のどこかでそんなことを思いながら勉強とバイトを続けた。

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