相、雫4

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“久しぶり。お母さんです。救急車で運ばれたと聞きました。私はあなたにたくさん謝らないといけません。でも、謝るだけではきっと足らないよね。もう一度、これからのことちゃんと海斗と話したい。お願いします。”


十何年間も求めていたはずの母さんからの優しい言葉。


でも今の俺にとっては、ただの戯言にしか思えないんだよ、母さん。


今更謝られたって、もうどうしようもないだろ。


諦め、怒り、恨み、悲しみ、呆れ。


心の底から湧くこの感情が、もはや何なのかも分からない。


既読をつけてそのままメッセージを閉じた。


海人も呆れて笑ってくれるだろうと思っていた。


なのに。




「家族は、いつまでたっても家族、だし。海斗がお母さんをどういうふうに思ってるかとか、俺はわかんないから、なんも言えないけど…なんていうか、海斗は1人じゃないよってこと。海斗は、海斗のお母さんとも家族だし、うちの家族とももう家族みたいなもんだから。もし辛くなったらまたうち来ればいいよ。いつでも待ってるから。」




こんなことを言ってきた。


海人の言葉を脳内で噛み砕くその前に、先に視界が滲む。


「待ってるから」


その言葉は、今までどこにも居場所がなかった俺に、初めて居場所をくれた言葉だった。


ずっと1人で、これからも1人で生きていくと思ってた。


ふらっと目の前に現れた海人に、背中を預けてしまいそうになる。


…いや、預けてもいいのかもしれない。


どんな俺でも受け止めてくれる、応援してくれる。


海人との出会いが、俺の人生を変える気がした。

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