自覚 ページ41
「ねぇA……あなたメタナイト卿の事が好きなの?」
目を覚まして、そばにいるフームと話していた時、不意に聞かれた。突然の事にホットチョコを反射的に飲み、案の定咳き込んでしまった。
「ふ〜ん」
「あ、いや、その……た、確かに卿はいい人だと思う。けど」
「けど?」
「私には勿体無さすぎる相手かなって。それに卿が、私を好きになってくれているとは」
本音を零せばフームはしょうがないな、と言う風に溜息を吐いた。意味がわからず呆けているとニヤリと笑われ、
「つまり、あなたは本当にメタナイト卿が好きなのね」
図星だった。ぎょっと目を開いて、心臓が大きく跳ねる。太鼓のようなそれを抑え込むことなど出来るわけもなく、不可抗力のように頰が熱くなっていく。
いつの間にか、好きになってしまったのだ。「恋をするのに理由なんて無い」とはよく言うが、まさにその通りだと思う。あの人を好きになった理由なんて、逆に見つかりやしないのだ。想いだけが一人歩きしてるみたいで、恥ずかしい。顔を伏せた。
「ふふ、私はいいと思うわよ? それに卿だって──」
「Aちゃんが倒れたのかゾイ⁉」
「あぁ陛下、ノックぐらいして下さいでゲス‼」
ドン、と勢いの良い音が間近に迫って驚いた。音の起因を見れば、そこには大王が切羽詰まった様子で佇んでいた。先程までの空気をぶっ飛ばされ、唖然とする。
「大丈夫か⁉ とても心配したゾイ……」
「あぁ、大丈夫ですよ陛下。もうなんともありません」
手を取られ、心配そうな面持ちの大王が目前に来る。本当に心配してくれたんだなぁと思うと、不思議と苦笑が浮かばなかった。この人はただ子供なだけで、人情は人並みにあるのだろう。にこりと自然に笑みが溢れる。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません陛下。ありがとうございます」
「迷惑なぞかけておらんゾイ! ならこのエスカルゴンはどうなるゾイ? わしにいつも迷惑かけてばかりゾイ。」
待ったをかけるようにエスカルゴンが突っ込む。なかなかのキレだ。
「はぁ⁉ いっつも迷惑かけてんのは陛下でゲしょうが‼」
「何ィ⁉」
どこから出したのか、ハンマーを持ち上げデデデは逃げるエスカルゴンを追う。ぐるぐると部屋中を回った後、流れるような動きでそのまま私の部屋から出て行った。
フームは彼の出て行った扉を見たまま硬直している。その状況があまりにもおかしく、大きな声で笑ったのだった。今まで聞かせたことのないくらい、大きく。
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです! これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます! 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います! 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます! 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います! もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)
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