嘘と推測 ページ5
「お前がカービィ?」
「ぽよー」
彼が頭を抱えた。それと連動するように、私も乾いた笑いをこぼした。彼があんな反応をするのも当たり前だ。私だって勇敢な星の戦士の話を聞かされ、実はその戦士は赤ちゃんなんですーなんてことを明かされれば唖然としているだろう。実際そうなった。
「カービィ!この俺と戦え!」
……本当にやるつもりなんだ、彼。
「逃げてカービィ!」
「カービィさん!」
彼がカービィさんに飛びかかった。私もその横にいたので、食べ物と一緒に地へ投げ出される羽目になった。背中に激痛が走る。未だにちゃんとした服ではなく、布を体に巻きつけたような格好だったので、安全性もこれっぽっちもありゃしなかった。
「君大丈夫〜?」
「だ、大丈夫です……料理人さん、ありがとうございます」
「カワサキでいいよぉ〜。
……あ〜あ〜丹精込めて作った俺の料理が〜。」
手を貸してもらい起き上がると、心底残念そうにため息をついた。食べ物を粗末に扱うのは私も罪悪感があるし、わからなくもない感情だけど。今はそれどころじゃないと思うんだけどな。
「あ……カービィさんは⁉」
洞窟の入り口の方を見ると、彼女とその弟さんが家臣によって拘束されていた。
ああ、なんてことを……!
「あんた子供に何を……あぁ〜‼」
あたふたしているうちに、カワサキさんまで拘束されてしまった。幸い私は忘れられていたみたいで、拘束はされなかった。ここで影の薄さが有利になったか。そもそもの話、視界に入れられていなかっただけなのかもしれないが。
カービィさんは一向に戦おうとせず、彼から一心不乱に逃げ惑っている。
まだまだ赤ん坊だというのに、なんて酷な事をするの……? もしかして、あの大王に騙されていたりするの? だとしたら、私も彼も被害者なんじゃないの?
私を助けた時と同じように技を繰り出し大きな岩を落とす。カービィさんは反撃もせず、ただただ攻撃を受けるだけだった。
そもそも、攻撃しないんじゃなくて、攻撃できないとしたら……?
圧倒的に不利じゃないか、カービィさん。
彼が足技をカービィにお見舞いすると、着弾点からきのこ雲がもくもくと上がった。ギャグマンガで見たような光景だが、今はそんな呑気な事を考えている暇など無かった。
──もう、見てられない。
「カービィさん!」
認識した時には身体が動いていた。私はボロボロの彼を庇うように、抱きしめて紫の彼を真っ直ぐ見つめた。
「やめてください‼」
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです! これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます! 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います! 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます! 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います! もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)
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