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閑話 ページ32



目を開けた。周りは見渡す限りの夜空だった。思わず、へ、と間の抜けた声が出る。まずこの空間で声が出るのに驚いたが、さらに驚いたのは顔をあげた時の光景だった。

「久しいな、人間。そちらでの生活はどうだ?」

思わず視線を厳しくすると、それはさも愉快だというように口角を上げた。私を魔獣に変えた、ナイトメア。何故今更私の夢に? 疑問が絶え間なく頭の中を交差する。その間に、私の体がたった今重力を持ったように下へと落下する。上擦った声を出して着地すれば、私はルーレットの台に乗せられていた。周りには、どこかで見たカジノのチップが私の周りに積み上げられていた。右を見遣れば、小さな鉄球がルーレットを回っている。

「取引をしないか?」
「……は」

一体何を。

「私はそろそろ、あの村を滅亡に追い込もうと考えているんだ。」
「な──」
「そこで、だ。あの村の襲撃を遅らせるのと引き換えに、貴様の魔力を分けて欲しいのだ」

ゴロゴロ、と鉄球が回る音が聞こえる。その音ぐらいしか聞こえないこの空間に、底なしの恐怖をあおる。私の魔力と引き換えって、それは……

「もちろん、全て根こそぎ奪うという事はない。私もそこまで外道ではないのでな。あくまで少しずつ貰っていくだけだ。」

いろんな情報が目や耳から入ってきて、余りの多さに頭が揺れた。思わず上半身をぐらつかせると、傍らに積まれたチップに肩が当たった。それが崩れる音ではっと意識がはっきりしてくる。赤、青、黄色。色とりどりの色が私の周りに広がる。これは夢だ。夢だけど、すぐに消えてしまうようなただの夢などでは無いのだ。


唇を噛む。鉄の味が僅かにして、同時にぴりっと下唇に痛みが走った。私がどう返答するかで、村の──みんなの運命が決まってしまう。あまりにも重い荷を抱えさせられ、衣服を手でぎゅっと握りしめる。魔力は私の心臓を補助するようなもので、言わば生命線なのだ。そうやすやすと渡すわけにもいかないし、村を無下にすることもできない。
でも、あの人達が助かるのなら。

「私は、っ」

口を開いた。喉が乾いて、焼けるような痛みが私を襲った。視界に見える手だって青白い。
その悪夢の支配者は口を歪ませた。まるで彼女の返答を予測していたかのように。つくづく、掌で踊らされているのだと痛感させられる。どうしようもない事実に、言いようのない濁った感情が湧き出るのを感じた。
少しの沈黙の後、Aは言葉を紡いだ。

鮮烈な既視感→←緩やかな変化と



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設定タグ:星のカービィ , アニメカービィ , メタナイト   
作品ジャンル:恋愛
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです! これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます! 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います! 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます! 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います! もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Taruru | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年8月11日 1時

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