潜在意識の中で ページ27
彼女は口を開く事なくこちらを見つめている。おそらくAは、マッシャーの力を増強させる道具として利用されているのだろう。その証拠に、彼女は一切攻撃を仕掛けてこない。ダメージを与えられないにしても、周囲の岩を破壊して視界を遮る事ぐらいはできるだろうに、Aは何もせず立っているだけだった。
コポコポと、水中に泡ができる音が聞こえる。目を開けると、私は水底へと沈んでいた。ろくに回らない頭を働かせて、真上に浮かぶ鮮やかな光を見つめた。息はどういう原理か、続いているのだが──
「頭が、痛い」
水圧が己の体にかかり、思わず顔をしかめた。苦しい。何でこんな状況になったんだろう。目を開けたら、こんな水中……
「──‼」
誰かの声が、水の中で輪を作るように広がった。それは直接耳に入り込んでくるようで、とても重い声だった。脳内が霧に覆われたみたいにぼんやりとして、声の主が誰であるか考えるのさえも容易ではなかった。ただ、印象に残るはっきりとした声色だなぁと、どこか他人のように思いながら沈んでいく。マリンスノーが、私の周りを踊るように取り囲む。海の中も、こんな景色なのかな。そんな事を悠々と考えていた。
「卿。おはようございます」
「ああ、Aか。もう肩の傷は治ったのか？」
「はい、おかげさまで」
城の図書館でぼーっと照明を見つめていると 、ふと扉が軋む音が聞こえた。ほぼ無意識に視線を向ける。少しオレンジがかった紺のマントが目に入り、彼がやって来たのだと考えずともわかった。
「A。──一つ、聞いてもいいだろうか」
「大丈夫です」
「そなたが、本当に操られている時は……どうすれば良い」
辞書ぐらいの厚みがある本を手に取りながら、彼がぽつぽつと発する。彼の背中から、何か寂然としたものが感じ取れた。つくづく彼には、わからないことが多い。少し頰を上げながら、その疑問に答えた。
「そうですね──私の名前を呼んでください。貴方の声が聞こえて来たら、元に戻れるような気がしますから」
卿は私が座っている席と向かい側の席に座った。……やっぱり見覚えのある言語だ。この星でも、共通語は英米のそれなのだろうか。少々興趣をそそられながらも、彼の目を見澄ます。
「でも、どうして急に？」
「いや……どうも、杞憂とは思えなくてな。」
意味深なその言動に困惑する。図書館特有の古くさい匂いに、心が落ち着いてくる。優しく私達を照らす天井の灯火が、静かに揺れ動いていた。
この気持ちに気付いたその時、→←吊るされた糸は細くて丈夫で、
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます！お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです！ これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (
レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます！ 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います！ 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます！ 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います！ もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)
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