どんどん惹かれる意識と無自覚 ページ19
「……凄いですね。いっぱい願いが叶いそうです」
「願っているうちに、見失いそうではあるがな」
他愛もない会話を交わしている最中に、ふとアイデアが思い浮かんだ。手を握って開いて、準備運動をする。
「……何をしている」
「見ててください。よいしょ……っと」
彼女は手すりである煉瓦に手をつき、身を乗り出す。その途端、私達の近くに星々が降り注いだ。あまりにも圧巻なその光景に、目を丸くする。まるでおとぎ話のような状況に、ただただ動揺を抑えきれない。Aは一際目立つ流星が流れたかと思うと、それを素早く掌で捕まえる。
風がぶわっと吹き上げ、身につけていたマントが激しくはためいた。彼女が握っているそれは、透き通るように輝いている。火花のようにぱちぱちと弾けて、名前の拳の中で一層輝きを強めていた。
「えへへ、凄いでしょう?これをですね、」
星は、Aの両手に包まれて輝きを落ち着かせた。彼女は側にいる私でさえ聞こえぬ声で、呪文を唱えている。その時の彼女は、例えようもなく──
──美しかったのだ。
「メタナイト卿、プレゼントです」
そう言って私の手にそれを握らせた。流星群の光源を頼りに乗せられた小さな物を見ると、それは宝石だった。
「……サファイア?」
「ただのサファイアじゃないですよ。よく見てみてください」
そう言われて、 眼を凝らしてその青く輝くサファイアを観察する。表面には、まるで星のような形に輝く光が現れていた。様々な目線から見れば、様々な表情を浮かべるそれはまさにこの夜空の流星のようだった。
「スター効果のあるサファイアですよ。こんな綺麗な宝石が作れるのは今夜だけだなと思って、作って見たんです。よければ、卿に差し上げます。」
それは心なしか、今まで見たどの物より魅力的に見えた。素材が流星群の光なんて、彼女もかなり情緒的だなと思い耽った。尾を引くその感情は、あまり感じた事が無く。この前考えて、結局蓋をしたあの感情と酷く類似していた。彼女の微笑みや、感動しているときのしみじみとした表情は、目を自然に奪われる。その中に混ざり込んだ哀愁さえ、私の心を騒つかせる材料になっていた。
彼女は不思議だ。彼女が求めずとも、己に必要な人や物事がひとりでにやってくる。惹きつける何かがあるのか、それとも無いのかもわからない。私はそのような現象に、無意識に反応しているのかもしれない──
弧を描く流星群が、私達の間を滑り落ちていった。
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです! これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます! 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います! 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます! 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います! もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)
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