魔法の振れ幅 ページ18
「今夜、流星群が降るんですって!」
フームにそう告げられたのは、当日の昼だった。ハナさんからお手伝いのお礼を頂いた帰りに、城の近くの丘で星座図鑑を読んでいたフームに話しかけられたのだ。
「気になって図鑑を引っ張り出してきたんだけど、この流星群はきっと凄いわ!三大流星群のひとつの、ペルセウス流星群らしいのよ!」
そう興奮気味に語る彼女は、目が輝いていた。滅多に無い機会に、すっかり心が弾んでいるらしい。Aも、流星群は見た事がある訳では無かった。その話を聞いて同じく彼女も、心を密かに躍らせる。
「へえ、そうなんだ。いつぐらいに降るの?」
「ええと……十一時ぐらいの真夜中ね。折角の流星群だけど、みんな眠ってしまってるかも」
ここの村は、夜中まで誰かが騒いでいるような治安の悪いところでは無い。故に、騒音も無い環境に自然と置かれることになるため、就寝時間も早まるのだろう。椿の髪飾りも、そろそろ時期遅れか。また向日葵か何かの髪飾りでも探してみようかな。
ここで話は変わるが、私の魔法の使い勝手についてだ。私は殺傷能力のある魔法が繰り出せないのはもちろんだが、それ以外の「人をサポートする道具」だったり、「自分の望むもの」を創り出せたりする。以前翼を生やしたり、飛んだりしたのはそれの影響だ。ただ人を傷つけられないだけで、使える魔法のバリエーションは豊富なのだ。
「うぅ、夜なのに暑いなぁ」
完全に熱帯夜だ。頭がクラクラするが、氷を頭に当てたらどうにか治った。熱中症になりかけていたらしい。うーん、体調管理もしっかりしなくちゃな。
「A? こんな夜中に起きていると体調を崩すぞ」
後ろを振り向くと、卿が居た。
「卿。どうやら今夜、流星群が降ると聞いて待ってたんです。こんな機会全くありませんし……卿は、なぜ?」
「夜の見回りだ。私もちょうど疲れてきたからな、隣いいか?」
二つ返事で返すと、彼が影から姿を現す。今夜は月の光が無いから、はっきり見えそうだな。そう呟いて私の隣に歩み出る。ほんのりと明るい光は、周りの星々によってもたらされていた。
ここの星は、自然が豊かだ。私のいた星は、発展しすぎて星の類が気付けば見られないようになっていた。流れ星など以ての外で、少しこの状況を楽しんでいる自分が一番珍しいのではないのだろうか。
「……あ!」
「始まったな」
そこには無数の輝く糸。霧雨のように降るそれは、まさしく幻想的な世界に私達を誘った。
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです! これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます! 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います! 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます! 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います! もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)
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