その気持ちに気付くまで ページ17
彼女の微笑みは、とても穏やかだった。Aはまだ、完全に回復したわけでは無い。現に彼女の傷は、依然痛々しく痕を残している。それでもAは、その事さえ気に介さず私の身体を癒そうと掌に触れる。己のそれとは真反対な華奢な手に、心が締め付けられるのを感じた。
──おかしい。私はこんなにも、彼女に対して様々な感情をぶつけてしまっている。何故だ?彼女が余所者で、魔獣だからか。……違う。むしろ私は彼女の事は、善良な人物だと認めている筈だ。私やカービィと似通っている点が多いから、きっとこんなに気持ちが湧き出てくるのだろう。半ば強引に自分の気持ちに蓋をした。
「A?傷は大丈夫になったの?」
「ううん、十分にはまだ。でも、今は卿の怪我が最優先だよ」
本当はカービィが優先されるべきなのだが……いかんせん、隙がない。ならせめて私以外の人を治すのに専念した方がいいと思っての判断だった。それに、ナックルジョーの計画を完遂するためにも──。
「Aは……ナックルジョーに、捕らわれてああなったの?」
「……まあね。気づいた頃には体が操られてて」
申し訳程度の言い訳を重ね、カービィと対峙しているナックルジョーを見つめる。ここまでは上手くいっているから……きっとできる筈だ。ネタばらしの時間は、刻一刻と迫っていた。
「まさか貴方まで計画に加担していたなんて」
「ごめんね。でも、まず仲間を騙す発想は無かったなぁ」
「へへ……まあ、協力ありがとよ」
鼻の下をこする癖があるのか、不敵な笑みを浮かべながら返事を返すジョー。
「A、サンキューな。怪我までさせちまったけど」
「ああ、大丈夫だよこのくらい。心配しないで。」
「……心配してねぇよ。お前がここで生活できてんなら関係無ぇ」
そうぶっきらぼうに言うものだから、くすくすと笑いが喉から出てくる。不服だ、と言うように目線を送ってくるけど、きっとそれは私の気のせいなのだろう。
「よし。じゃあ俺はまた魔獣をぶちのめしに行くから。じゃあなカービィ、また会おうぜ」
「ぽよ!」
カービィも彼の真似をして鼻の下をこする。可愛らしいその姿に少しほっこりしながらも、また別の場所へと旅立った彼を見送った。
「ナイトメア様。どうやらあの被験体が未だ生きていたようです。いかが致しましょうか?」
「放っておけ。あの失敗作など、戦力になる事はまず無い。むしろ、何かに使える筈だからな」
「承知致しました。では、そのように」
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです! これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます! 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います! 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます! 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います! もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)
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