違和 ページ12
「チリー」
その雪だるまは、氷に乗せられ遠くへ旅立った。この暑さでは、十分も持たない。けれど彼はまた逢えることを信じて、チリーを送り届けていた。サンサンと日が照りつける日々が帰ってくる。もう冬は、跡形も無く溶けて地を潤わせていった。
「ローナ王女?」
「ええ!とっても綺麗なお方なんですって。デデデも結婚だなんだって騒いでたわ……」
「そっちの方が、ありがたいかなあ。」
一週間後のことだった。どうやら他の星の王女様が、ここププヴィレッジに訪れるらしい。案の定大王はそちらに目移りし、Aのことはすっぽり抜けてしまっているようだった。そのまま私に気が無くなってくれれば良いんだけど。
タゴのコンビニからの帰り。やけに騒がしい村の中心。コンビニとは多少呼び難い大きな店を離れ、その喧騒の正体を探しに歩いた。
「あら、A!あなたもここに来てたのね?」
「え、いや。何だろうと思って来てみただけなんだけど……」
上を見上げると、見覚えのある言語で書かれた看板が。そういえば、ここの国の標準語は何なのだろう。そもそもここは多民族の暮らす村らしいので、本を読んだりする時は不便ではないのだろうか。
「おや、これまたフーム殿のご友人かな」
横に視線を向けると、ここの住民とは一風変わった格好をしている男の人がいた。剣を持っているあたり、彼は近衛兵の地位にいる者なのだろうか。
「随分力を入れてますね……。」
キャンディーだったり、綿あめ、クレープまで。普段お目にかかれない程の品揃えの良さに、なんとも言えない感情がこみ上げる。屋台を見るのも、久し振りだ。
「私は近衛兵のビー。あなたの名前は?」
「ああ、私はAです。」
「なるほど、A殿!あなたはカービィ殿のお友達なのだな、仲良くしよう!」
手を差し出され、握手をする。……鍛えているにしては、手の感触が柔らかいような……もしかして、この人。
その時感じた予感は、後に見事に的中してしまったみたいだった。
「王家の紋章……」
「ローナ王女は、あなただったのね?」
彼女――ローナは、何かを諦めてしまったような瞳で静かに頷いた。確かに王女は、一目見れば惚れてしまいそうな美貌だった。誰でも好きになってしまいそうな、そんな……
「……あれ」
私、なんでメタナイト卿の事を思い浮かべたんだろう?補色の絵の具が中途半端に混ざり合ったような違和感を覚えた。理由もそのままに、時間は悠々と過ぎていくのだった。
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです! これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます! 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います! 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます! 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います! もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)
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