過去の自分と今の自分 ページ25
「私が……向こうにですか？」
「ああ」
そう言われ目を伏せた。私が、あの星にいた時は──
「あそこにいた時は、そんなに友人も居なくて、親にもあまり恵まれなくて……だけど、どん底な生活と言えたわけでもなくて。実際、その頃の私馬鹿みたいに明るかったので」
そう言うと、メタナイト卿は声を落として
「明るかった、とは」
「捕らえられてからです、私がこんなおとなしい性格になってしまったのは。……ああ、でも元々素質はあったのかもしれませんね」
目を閉じて今までの記憶を掘り返す。一体何から話せばいいのかな。
「私の友達が、他の子にとられて悲しかったのは覚えています。いつも去り際に他の子が私に『ざまあみやがれ』とばかりに笑ってきて、心が傷つくのがわかりました」
そう、確か私の友達の別の友人だった子だ。こういうのは良くある、とは聞いた事はあったが、なかなかに精神に来ていたことは覚えている。
「……そなたは、平気だったのか？」
「いいえ……実際、少し弱っていましたから。でも、そのくらいです。あとは、ナイトメアに攫われた事ぐらいですね」
あの時は本当に怖かった。あそこに人権なんてものはなく、ただ魔法の訓練をやらされて、失敗すれば電撃を喰らわされ……まるで悪夢のような暮らしに慣れてしまった自分がいた、という事実にぞっとした。もしナックルジョーが助け出してくれなければ、私は一生あそこでのたれ死んでしまっていた事だろう。
「そなたは、十分に辛い経験を積んできた」
卿の手が伸び、私の頬へとすべる。その手は仄かに暖かくて、心地良い。
「だから、もうそなたは怯えなくても良い。これ以上の不幸せなど、望まなくともいいんだ。」
「でも私、幸せになるのが怖いんです。そうなったとして、それをかき消してしまうような出来事が起きてしまうような気がして。」
「今まで以上の不幸せなど、ここには存在しない。ここに在るのは、そなたの欲しかったもの。そして、そなたの唯一無二の存在になり得る者達だけだ。
──行こう、A。もうそろそろ、カービィも自宅に帰っている筈だ。ここは道が少々荒れているからな、送ろう」
言うや否や手を差し出される。おずおずとそれに己の掌を重ねると、こわれものを扱うかのように握られる。急に面映くなって、視線を彼からずらして歩みだした。騎士道というものは、こんなにも気恥ずかしい事をやってのけるのだろうか。ちょっとした蟠りが私の中で芽生えた気がした。
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Taruru(プロフ) - 武藤さん» コメントありがとうございます！お褒めのお言葉ありがとうございます、今までに一番力を入れて書いている作品なのでコメント頂き本当に嬉しいです！ これからも更新を頑張って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年7月23日 22時) (
レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
武藤(プロフ) - 初めまして!感想が山ほどありすぎて、全てをお伝え出来ず本当に申し訳ない…ここまで心を揺さぶられ、締め付けられる作品に出会えたのは初めてです…本当にありがとうございます…! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 957024adf4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - Lavenさん» Lavenさん、コメントありがとうございます！ 返信遅れて大変申し訳ありません……小説を閲覧頂きとても嬉しいです。これから本格的に終わりに近づいていきますが、頑張って更新をしていこうと思います！ 応援ありがとうございます。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 東方&カービィラブさん» コメントありがとうございます！ 受験は無事終わりましたので、更新は定期的にできるようにはなると思います！ もう物語も終盤ですが、どうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
Laven - Taruruさん、お久しぶりです! 以前に貴方様からコメントをいただきましたLavenです。いつかこちらにお邪魔しようと思っていたらかなり間があいてしまいました……。今後の展開が色々と気になり過ぎます! 今でも更新を待ち遠しく思っています、頑張ってください! (2018年3月4日 20時) (レス) id: 8121ec6dbe (このIDを非表示/違反報告)
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