逢 ページ10
イチゴを洗い終えた頃には、生地はもう焼き上がっていた。
練色のしたそれは、ヒビが入っている。生焼けでないいい証拠だ。
生クリームを取り出そうとすると、コンコン、とノックが聞こえた。
誰だろう、と思いドアへ向かい開けてみれば、そこには人影一つなかった。
あったのは、私がメタナイトさんにジャムを送るのに使ったかごに入った手紙と赤いカーネーションのみだった。
『一輪のカーネーション………?一体、』
その贈り主がわかったのは、手紙の裏に書いてあった
「From Meta Knight」
の文字だった。
その瞬間、あのノック音はメタナイトさんのものだと気づく。
私は辺りを見回すのみならず、駆けて彼の姿がないかこの森の抜け道を走り抜いた。
――会いたい。あの人の綺麗な瞳を見たい。
その一心で、ひたすら走った。運動慣れもしていないのに、馬鹿なことだと思うがそんな事を考える余裕はなかった。
今の私の心情を表すかのような木の騒めき。いつもは聞き入るはずのその音は、私の土を踏みしめる音に殆ど掻き消された。
『メタナイトさん………』
息が上がって来たころに、切なくなって思わず彼の名を呟く。
「――A」
刹那、上から聞こえた彼の声。
声の先を見れば、木陰から見える二つ程の光。
『あ…………』
メタナイト、さん
その言葉は先ほどの木のざわめきに掻き消される。
『またお会いできて、嬉しいです………フームさんは、元気ですか?』
彼が居る木の幹に手を置いて、彼の気配がする方に目を向け話す。
「ああ。またあなたと話がしたいと言っていたぞ。ジャムもおいしかった、と。」
『良かったです………また、何かあったらよろしくお願いしますと伝えておいてくれませんか?』
「…………勿論だ。」
その言葉に思わず笑みが零れる。一瞬彼の息をのむ音が聞こえた。
『そうだ!今丁度パブロバっていうお菓子を作ってるんです。良ければ私の家で食べていきませんか?』
思わず彼を誘う言葉をかけた。今回のお菓子は、かなり出来がよくなる予感がするのだ。
それに、食べながら会話を交わしたい。それが一番の誘った理由だった。
そんな私の言葉に彼は木から降りて、私を直接見て言った。
「行かせてもらうよ」
カーネーション(赤):「My heart aches for you (あなたに会いたくてたまらない)」
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ネヴァライス(プロフ) - いい話でした!メタナイト卿最高! (4月24日 16時) (レス) @page22 id: 809f109241 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 猫じゃらしさん» 感想ありがとうございます!恥ずかしながら次回作の更新頻度は高いとは言えませんが、なんとか頑張っていく所存です。 (2016年8月17日 0時) (レス) id: 8c208b8a17 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - サファイアさん» わかります!得もいえぬかっこよさが滲み出ていますよね! (2016年8月16日 23時) (レス) id: 8c208b8a17 (このIDを非表示/違反報告)
猫じゃらし - お疲れさまでした!ドキドキな場面が多くてスゴかったです(///ω///)♪次も頑張って下さい! (2016年8月6日 14時) (レス) id: bc2366067c (このIDを非表示/違反報告)
サファイア - メタナイト落ちっていいですよね! (2016年7月14日 21時) (レス) id: 7ac2b69858 (このIDを非表示/違反報告)
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