愛らしい ページ22
「もう、あの騒動から随分経つな」
『そうですね。思い返してみればそんなに最近じゃ無かったんですよね…』
あの頃は、とにかく必死だった。
メタナイトさんの事を考えるばっかりで、かといって何もなかったわけもなかった。森の危機に襲われたのが、まだつい最近のことのように思えてならない。
そして私の人生を変えた出来事だったこともあって、それは未だに色あせることなく私の心に色濃く描かれている。
「Aは……私といて、何か思う事はあるか」
夏の大きな雲を眺め、そう問われる。いまいち意図を読み取れなかったが、自分なりの言葉を彼に返した。
『うーん、私は貴方と一緒にいるときは常に幸せの中にいるんだなぁ。って、思ってます。
もちろんあの時は本当にどうなるかと不安で仕方がなかったけど、今以上の幸せは望めなかったと思います。
だから私は、メタナイトさんの恋人になれてとても幸せですよ。あの状況に戻りたいとか、そんなことは一度も考えたことがなかったです』
素直に告げると、メタナイトさんは少し私の目を見つめ微笑んだ。
「A…少しこちらに来てくれないか」
『わかりました』
言われるままにメタナイトさんの横に立つ。ちょうど目線がかち合う距離で、不覚にもどきりとしてしまった。
「A……」
『…はい』
彼の瞳が熱を帯びた。仮面を外せば、銀河色が静かに煌めいている。
ゆっくりと目を閉じれば、唇を奪われる。それは優しく穏やかで、胸が暖かくなるようなくちづけだった。
『……ん』
今まで触れるだけの優しいキスだったのが、隙間もない重厚なキスに変わり思わず彼を抱きしめる手に力が入った。
それもあってか、メタナイトさんは突然口づけをやめた。どうしたのか、と彼を見遣ると、
「……すまない、驚かせただろうか」
『あ、いえ、
……怯えたとか、そういうわけじゃないんです』
私の二言目をじっと待つ彼。
『ただ……ちょっとドキドキしちゃって……』
恥ずかしさから視線を逸らすと、彼が笑う声が聞こえた。
え、と声に出し彼を見る前に、顎を手で持ち上げられ自動的に彼と目線が絡み合う姿勢になる。
「本当に、そなたは愛らしいな」
『そ、そんなっ……ん…』
まともな返答をする前に、再び柔らかな感触に触れる。
それはどうしようもなく私の心臓を早まらせて、今までにない程心音が大きくなる。彼にこの音がバレてないか心配になりながら、それを受け入れていた。
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ネヴァライス(プロフ) - いい話でした!メタナイト卿最高! (4月24日 16時) (レス) @page22 id: 809f109241 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - 猫じゃらしさん» 感想ありがとうございます!恥ずかしながら次回作の更新頻度は高いとは言えませんが、なんとか頑張っていく所存です。 (2016年8月17日 0時) (レス) id: 8c208b8a17 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - サファイアさん» わかります!得もいえぬかっこよさが滲み出ていますよね! (2016年8月16日 23時) (レス) id: 8c208b8a17 (このIDを非表示/違反報告)
猫じゃらし - お疲れさまでした!ドキドキな場面が多くてスゴかったです(///ω///)♪次も頑張って下さい! (2016年8月6日 14時) (レス) id: bc2366067c (このIDを非表示/違反報告)
サファイア - メタナイト落ちっていいですよね! (2016年7月14日 21時) (レス) id: 7ac2b69858 (このIDを非表示/違反報告)
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