月の元での ページ42
『……愚問ね。そもそも、一秒でも共にいてくれと言ったのは誰？』
「………」
『私は必死にもがいて、藻搔いた末にやっと巡り会えたのよ。それでこれ以上の幸せはないと思ってたら、今度は貴方と恋人になれた。
そんな事が続けば、もっと我儘になるものよ。ヒトは』
淡々と話す間も、なお振り向かない藍色のマント。夜目が効いてきたのか、彼の肩当ての形もはっきりと見えるようになった。
『だから、私は貴方とこの時間だけじゃない、一生を寄り添って生きたい。貴方が命尽きるまで、貴方の後ろをついていく覚悟はとっくの昔にできてるのよ。』
そこまで言うと、彼がゆっくりと振り返った。相変わらず、星色の目が眩しい。その目が近づいてくるにつれ、彼の輪郭がくっきりと映える。月明かりが漸く差したらしい。
「そうか。………変な質問をしておいて、 なんだが。」
彼が私に跪き、こう告げた。
「私は、一生……ここから居なくなるまで――そなたと居たい。
私と、結婚してくれないか」
『……はい。
一生、貴方についていくわ。メタナイト』
そのまま彼は、仮面越しに私の手にキスをする。こういう所が、彼らしいわね。なかなかロマンチックな演出をしてくれる。私もお返しとばかりに額に唇を落とした。
『ふふ、まさか私が結婚するなんて思っても見なかったわ』
「そうだな……私もだ。
そういえば、結婚指輪はどうするのだ？」
『やだ、私達には指輪は無理よ。そうね、髪飾りとか良いんじゃないかしら？他には……お揃いの香水とか、時計とか。』
指輪は私たちの手にははめれない。だから何か他のものを買う必要があるだろう。まあ、私はなんでも嬉しいんだけど。それでは彼の気が済まなそうだから。
「まあ、その辺りが妥当だろうな。では、そなたには髪飾りでも贈ろうか」
『ふふ、嬉しいわ。私からは、小さな頃から大切に持ってる月のペンダントがあるの。
私の宝物を、大切な貴方にあげたい』
「……そうか。これはまた大切なものを預けられたな」
そういうと私を引き寄せ、愛しむように手を握るメタナイト。私はそれを握り返し、彼に頬ずりする。気分が、とても落ち着く。
『あはは、そんなに気負う事ないわよ。ただ、私が持っておいて欲しいだけなんだから。』
月明かりを浴びて、私達は誰よりも幸せな空間にいた。噴水の水面に映る二人が、静かに唇を合わせる。薄く開かれた双方の目は、深い情愛に満ちていた。
とても美しい、月が碧く輝く夜だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルア(プロフ) - ああ.......尊い...........最高｡:+((*´艸`))+:｡ (2021年4月10日 12時) (
レス) id: e424c5f1e4 (このIDを非表示/違反報告)
巫零亜【フレア】(プロフ) - あぁ…恋愛甘々シーンの描写が上手いのと場面のチョイス最高っす… (2020年4月16日 0時) (レス) id: 258f8cb9be (このIDを非表示/違反報告)
真後ろのソース - あぁ…尊い…やばい、好き()よきかな。うんうん、よきだな。(何様やねん (2019年9月16日 17時) (レス) id: cae02b46bd (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - まひさん» コメントありがとうございます！ 激甘ですか……ご希望通りには出来ないと思いますが、出来るだけ甘くなるように書いてみますね！ リクエストありがとうございます！ (2018年4月4日 12時) (レス) id: c1df570a9b (このIDを非表示/違反報告)
まひ - なんて・・・尊い！！ この二人の激甘か゛すごくみたいです！ (2018年4月2日 22時) (レス) id: 4418933e28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
