某日 ページ5
城の見回りをしている時だった。
陛下の玉座の間をちょうど通り過ぎる時、カスタマーと陛下の声が聞こえた。
咄嗟に扉の前で立ち止まり、その会話に意識を集中させる。また、新たな魔獣を呼び寄せようとしているのかもしれない。もしそうであるならば、彼の身に危機が及ぶ前に対策を講じなくては。
「ところで陛下、本日は少しお伝えしたいことがございまして」
「何ゾイ?」
「実はですね、つい先日、ナイトメア社からこのお城へと魔獣が逃げ出してしまいまして……」
「何ィ⁉︎逃げ出したァ⁉」
「何をやってるでゲスか!お前ンのとこの管理体制はザルでゲスか⁉︎」
魔獣が逃げ出した。
私はそれを聞いた瞬間、憂慮すべき事態に置かれていることを直感的に理解した。
「大変申し訳ございません。私めの落ち度でございます。
ですが、件の脱走魔獣は未だ未完成の状態なのです」
「未完成?」
「はい。戦闘能力は備わっているのですが、完成までのある一行程を終えていない状態でして」
しかし、ある疑問が私の中に浮かんだ。
カスタマーは、「つい先日」と発言した。ということは、少なくとも昨日や一昨日の話ではないのだろう。理性を持たぬ魔獣であれば、その身に蓄積する衝動のままにすぐ城や村を襲う筈。だが、ここ数日城が襲撃されたことも、村が襲われたという事態も発生していない。
魔獣は、一体どこへ消えたのだろうか──?
「魔獣を完成させるためにも、見つかり次第こちらへと転送して頂ければと思うのですが──」
「嫌ゾイ!なぜ貴様のミスをわしが尻拭いしなければならんのだゾイ⁉︎」
「おや、実はですね陛下。その逃げ出した魔獣は、どの魔獣よりも可能性を秘めた個体でして。
カービィを倒すのも、夢ではない能力を持っているのですよ」
「何?それは本当か?」
ですから、協力して頂くことで陛下にも利があるものだと思うのですが。
そう言ったカスタマーの声は、見ずともほくそ笑んでいるのだろうとわかった。
……このままではいけない。本格的に調査を始めなくては。
私は、自室へと足を運ぶ。
デデデ大王とエスカルゴンの高笑いが、城中に響き渡っていた。
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Taruru(プロフ) - ロアさん» コメントありがとうございます!これからどんな物語になるのか、私ですらも未知数ではございますが、見守って頂けると非常に嬉しく思います! (2023年1月11日 14時) (レス) id: fac5bd7c83 (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - これからどんな展開になるのか楽しみです! (2023年1月10日 16時) (レス) @page5 id: 1828bfdce7 (このIDを非表示/違反報告)
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