存在の承認 ページ18
「A」
「は、はい」
「そなたは改造を施された時に、何故か精神面での意識の侵攻がなかった、と言っていただろう。細かな分類は違えども、おそらくそなたも良心を備えた魔獣、ということになるのではないか?」
「……なるほど」
私の場合は改造されて意識の汚染が叶わなかったというだけだが、それだけ自分の良心という意志が強いということになるのかもしれない。自覚はないし、そんなことはないとは自負しているけれども。
だけど、村で変わらず生活している二人と、私は同じ。不思議とすごく安心してしまって、俯き深く息を吐く。私は存在してもいいんだ、という確証が得られた気もして。
「ようやく緩んだ顔を見せたな」
「えっ」
この空間に響く彼の声が、一層柔らかくなるのを感じた。
「その顔をしている方が私は好きだ」
「な、」
それ、どういう──
俯いていた顔をバッと上げて彼の姿を捉えようとした頃には、卿はそこにはいなくなってしまっていた。
「……いつ消えたの……」
内心げんなりしつつも、自らの頬を触る。
ああほんとに、私って人慣れしていない。あんな普通の言葉で、こんなに頬が熱くなるなんて。
唸りながら、カブー内部を後にしたのだった。
自身の住まいへの帰路の途中。やけに村中が静まり返っていることに気付いた。まだ昼下がりだから寝静まる訳もないし、一体どういうことなのだろう。首をかしげる。真ん中にそびえたつ大木の横を丁度通り過ぎていくと、ふと向こうに見覚えのある人影が走ってきているのが見えた。
「おーい!A!」
「あ、ブン。どうしたの?」
「どーしたもこーしたもねーよ、お前を探してたんだよ!ほらこっちだ、早く!」
矢継ぎ早に用件を話したブンは、私の手を掴んで走り出す。
待っ、球体の身体で手を持たれると浮く……!
そう言うことも叶わず、必死に足を動かしてブンのスピードに合わせるのだった。
「よーし、着いた!おーいみんな、来たぞ!!」
着いた場所は、草原が広がっている地面に大きな机が置かれている、何かの会場らしき場所。机の上には美味しそう料理が置かれていて、まるで何かを祝うような風貌だ。
ブンが大声で呼びかけると、一斉に破裂音。その音に一瞬動揺していると、間もなく皆の声が──
「ププヴィレッジへようこそ、A!」
「……えっと??」
予想だにしなかった展開に、思考が止まる。何か大きなリアクションでも返せればよかったのだが、如何せん思考が追い付かなかった。
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Taruru(プロフ) - ロアさん» コメントありがとうございます!これからどんな物語になるのか、私ですらも未知数ではございますが、見守って頂けると非常に嬉しく思います! (2023年1月11日 14時) (レス) id: fac5bd7c83 (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - これからどんな展開になるのか楽しみです! (2023年1月10日 16時) (レス) @page5 id: 1828bfdce7 (このIDを非表示/違反報告)
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