逃走 逃避 ページ11
「カービィ！」
フームは、魔獣が消え去ったのを確認するとすぐに座り込んでいるカービィに駆け寄った。彼の無事を確認しほっと胸をなでおろすと、彼女は先ほどのことを思い出し、はっとして視線を巡らせる。
「……いないわ……」
彗星の如く現れたその人物は、忽然と姿を消していた。カービィも疑問に思ったのか、きょろきょろと辺りを見回している。
「──ぽよ！」
……かと思えば、どうやら思い当たる場所があるらしい。カービィは何処にそんな気力を残していたのか、城に向かってぽてぽてと走り出した。フームとメタナイトは互いに顔を見合わせ、彼を追いかける。風が草をさぁっと撫で、春の微かな香りがププヴィレッジを包んでいた。
「…………」
帽子のつばを持ち、目深に被る。吐いた息が微かに震えていた。
瞬間移動して逃げてきた部屋の中。先ほどのあたたかな日差しと澄んだ大気とは打って変わって、埃っぽく空気が淀んでいる。
──やってしまった。
あの時の覚悟は何処へやら、私の心はすっかり萎えてしまい、考えなしの行動を後悔するほどになってしまっていた。能力を解除し、溜息を吐く。
これからどうしよう。カービィ以外の人に存在を認識されてしまったのだ、きっと魔獣だと糾弾され追い出されるに違いない。そうなったら、行く当てもない私はきっと……
そんな想像をして、ひゅっと息が詰まるのがわかった。
コンコン。
耳に響く音ともいえない、そんな軽い音。きっとカービィだろう。彼の手は、音を奏でるには柔らかい。あの騒動の後に訪ねてくるとは、彼も図太いな。そんなことを思い、親しみのある彼が訪ねてきて気が緩んでいたのだろう。考えなしにカーテンを開けて──
「ッ!!!!」
素早く閉めた。
カーテンを開けてまず見たのは、ピンク色の彼。それは予想通りだったのだが、彼の後ろに先程の二人が佇んでいたのだ。
そりゃそうだ。突然現れて魔獣を倒した者など、気にならないはずがない。
改めて自分がやらかした事を後悔して、でも窓の前でどうしようかと逡巡するくらいしか出来なくて。
──あぁ、どうして私は魔獣になってしまったのだろう。
この状況を前に、そんな現実逃避をした。
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Taruru(プロフ) - ロアさん» コメントありがとうございます！これからどんな物語になるのか、私ですらも未知数ではございますが、見守って頂けると非常に嬉しく思います！ (2023年1月11日 14時) (
レス) id: fac5bd7c83 (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - これからどんな展開になるのか楽しみです！ (2023年1月10日 16時) (レス) @page5 id: 1828bfdce7 (このIDを非表示/違反報告)
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