【星のカービィ】Seeming Monochrome

異なる世界の理 ページ3

「あの、すみません」
「ん？」
「ここは……どこなんですか？」

優しい風に靡く青々とした草原の中を歩きながら、そう質問する。草が私の足首辺りをくすぐって来て、この感触も久しぶりだなと旧懐の情が自然と浮かんでくる。

「あ、忘れてた！ここはね、プププランドっていう国なんだ！で、ここはクッキーカントリーの近く、だったかな？」
「は、はぁ」

だめだ。全く世界観がわからない。一度幼少期にプレイした程度の知識なんぞ、ほぼほぼ飛んでしまっているのだから消滅しているのと同然だ。カービィもカービィで、なんだか思考がほわほわしてるみたいで頼り無さそう……

「それでさ、Aちゃん！」
「はいっ」
「きみの様子を見てたんだけど、お家ないでしょ？」
「えぇ⁉」

思考を読まれていたのかはわからないが、急に先程とは打って変わった鋭い思考で質問を投げてくる。何にも言ってないのに、どうして──

「あのね、それならあてがあるんだ！良かったらそこに住まない？」

「──え、良いんですか？」
「お家が無いと、ゆっくり夢を見れないからね！考えるだけでもぼく嫌だもの」

……どうやら、彼は何より欲に忠実な人物らしい。道端に落ちているトマトやら寿司……？やらをつまみ食いしながら──いや、一口で平らげながら道中を進む。ゲームでの暴食っぷりはやっぱり本物らしく、道端にあるとか木に生っているだとか御構い無しに食い歩く。私としては衛生面的にいかがなものかと思ったのだが、巨大な生物でさえ一飲みしているような者相手にその疑問を投げかけるのもどこか場違いな気がした。

「はい！」
「──？」
「食べる？無敵キャンディ！ 食べると元気が湧いてくるんだよ！」

そのキャンディは可愛らしいフォルムをしていて、小さな黄色い星がちょこんとあしらわれていた。手渡され匂いを嗅いでみると、ほのかに甘い香りが私を支配した。
何だろう、果実類の香りでもないし、一般的な砂糖の甘い匂いそのものでもない。一体このキャンディが何から作られているのか分からず若干の恐怖を抱きつつも、その甘い匂いには勝てず恐る恐る舐めてみる。

「おいしい……！」
「でしょー⁉」

心なしか胸の奥底から何かが湧いてくるような感覚になる。成る程、元気が出る、とはこういうことか。ちょっと危ない成分が入っている訳では無いみたいで、心の中で胸を撫で下ろした。というか、こんなふわふわな世界にそんなものが存在する訳ないか。
自分が馬鹿馬鹿しく思えた。

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