月が灯り ページ6
満月の月明かりがとても眩しい。かかっていた雲が晴れて、綺麗な円がはっきりと見えた。そういえば、きたばっかりの頃もこんな風に輝いていたな、とふと思った。
「メタナイト卿」
「……なんだ」
「会いたかったです」
彼が息を呑むのがわかった。今まで胸中に押し込めていた思いを吐露するように、言葉がほろほろと零れ落ちる。張り詰めていた細い糸があっけなく切られるようにだった。何故だか、言葉に詰まることもなかった。彼を前にすると、止まらない。まるで言葉の海に放り投げられたようだ。
「ナイトメアのところにいた時、貴方の事ばかり頭に浮かびました。心ではもう未練は無いと思った筈なのに、どうしても捨て切れなかったんです。貴方が助けに来てくれることにも焦がれて、焦がれて──どうにかなりそうで。
こんな事初めてだったから、戸惑いもしましたけれど……私、とても嬉しいです」
そう言い切って、息を吐いた。少し冷たい空気が震えるのを微かに感じる。春の夜は、どこか切ない。バルコニーから見える、静かになった村を穏やかに見つめる。
「A」
「はい」
余所に向けていた顔をこっちに向ければ、頰に手のひらが置かれる。何度も触れた、彼の優しい掌。あ、と声を漏らす前に、開こうとした唇は塞がれた。彼の温もりを感じる前に、触れたそれは。
「き、卿──」
「駄目か？」
「──い、いえ」
これほどまでにないくらいに、頰が熱くなるのを感じる。彼のマントを握りしめて、震える唇に心で喝を入れて開く。
「う、れしい……です」
こんなにも心臓が痛い程に波打って、こんなにも視界が揺れて──抱えきれないほどの感情が私を包み込む。遂にはそれは溢れ出し、暖かな雫が頬を伝うのがわかった。
「メタナイト卿……好きです」
ぐしゃぐしゃで酷い有り様であろう顔を緩ませて告げる。何度も何度も言っても足りない。
は、という卿の息遣いが聞こえた。彼は両手で私の頬を包み、濡れた下瞼をそっと拭った。霞むような優しい光の水晶が、彼の後ろに見える。
彼の瞳は、どんな一番星よりも儚く瞬くなあ、とどこか頭の片隅で考えていた。
唇が、お互い壊れ物を扱うかのようにそっと重なった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ソウル・ハート - メタナイトカッコいいなぁ (2023年4月3日 8時) (
レス) id: de10e37100 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - メタ様が可愛かったです！ガチでニヤケが止まらない…また星カビ出たらみますね！ (2022年3月11日 20時) (レス) @page10 id: 1fcc16bd5c (このIDを非表示/違反報告)
柏木信子(プロフ) - はわわわわ…すごく面白かったです…!!ニヤニヤが止まりませんでした！ (2019年9月2日 18時) (レス) id: 76444309d4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - ランドルト環さん» コメントありがとナス！ おっ、(こんなとこで語録出して)大丈夫か大丈夫か？ 次回作も読んでくれよな〜頼むよ〜 (閲覧ありがとうございました。更新速度は遅くなると思いますが、次回作も読んでいただけると嬉しいです。) (2019年4月27日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
ランドルト環(プロフ) - はえ〜すっごい面白い…メタナイト卿がかっこよすぎて涙がで、出ますよ…。神作品だってはっきりわかんだね。やっぱTaruruさんの小説を…最高やな！新しい作品も書いて下さい！なんでもしますから！ (2019年4月23日 14時) (レス) id: 4b90a239d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
