脱出 ページ2
「ナックルジョーが──?」
彼も、この要塞に来ていたのだろうか。機械で形作られた周りの物体が、無表情に私達を見つめている。落ち着かない風景を眺めながら、卿の話を聞いていた。
「ああ。 ナイトメアとの戦いに協力してくれている。ともかく、私達は転送装置へ向かおう」
「は、はい!」
それにしても、ナックルジョーは──彼は、どうして私を助けてくれたのだろうか。利用するつもりだったはずなのに、どうして私を放置したりしたのだろうか。
でも、私はどんな理由があろうと構わないと思う。どんなに薄暗い理由があったとしても、私がこの幸せを掴めたのは全て彼のおかげなのだから。
「みんなー!」
「ねーちゃん!」
「皆さん!」
「A殿! 卿!」
「良くご無事で!」
カービィとフーム、そして私達が合流したのはほぼ同時だった。彼らの晴れ晴れとした顔を見れば、ナイトメアを消滅させることが出来たことが手に取るようにわかった。その顔を見て、私は密かに頬を緩ませる。
さぁ、本番はここからだ。私はきゅっと顔を引き締め、進行方向をじろりと睨んだ。
ただひたすらに、考えていた。
ここまで来て、私達が帰ることができなくなるのはもうこりごりだ。私は生きたい。村のみんなと、フームと……何より、メタナイト卿と。
転送装置のある扉が斬り刻まれるのを見ながら、そう願っていた。
「わぁ、っ⁉」
目の前が白くなったと認識するとすぐに、己の身体が重力に従って落ちていく。訳も分からないうちに目を瞑る。しかし、勢いがある割には思ったより衝撃は少なかった。恐る恐る目を開いて状況を把握しようとすれば、目の前には銀色。
「──あ」
「大丈夫か、A」
「ぇ、あ……はい」
足りない頭で必死に考えた末に理解出来たことは、私が横抱きの状態で卿に抱え上げられ助けられた、ということぐらいだった。咄嗟に行動できず、私は頭の中が一気に沸騰したみたいな感覚に襲われる。顔が熱くて、頭がくらくらして、どうにかなりそうだった。顔を見られたくなくて、思わず顔を背けた。
卿はそんな私をしばらく見て、何も言葉を発することなく静かに私を煉瓦の床に降ろす。卿の顔をうかがおうとしたが、フームが手を引いてきてそれは叶わなかった。
「A! もうすぐ夜明けよ!早く外へ出ましょうよ!」
「え?」
「どうしたの?」
「……ううん。行こっか、フーム」
手を引かれるままに、私は思いっきり出口を目指して走った。
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ソウル・ハート - メタナイトカッコいいなぁ (2023年4月3日 8時) (レス) id: de10e37100 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - メタ様が可愛かったです!ガチでニヤケが止まらない…また星カビ出たらみますね! (2022年3月11日 20時) (レス) @page10 id: 1fcc16bd5c (このIDを非表示/違反報告)
柏木信子(プロフ) - はわわわわ…すごく面白かったです…!!ニヤニヤが止まりませんでした! (2019年9月2日 18時) (レス) id: 76444309d4 (このIDを非表示/違反報告)
Taruru(プロフ) - ランドルト環さん» コメントありがとナス! おっ、(こんなとこで語録出して)大丈夫か大丈夫か? 次回作も読んでくれよな〜頼むよ〜 (閲覧ありがとうございました。更新速度は遅くなると思いますが、次回作も読んでいただけると嬉しいです。) (2019年4月27日 22時) (レス) id: d72b270231 (このIDを非表示/違反報告)
ランドルト環(プロフ) - はえ〜すっごい面白い…メタナイト卿がかっこよすぎて涙がで、出ますよ…。神作品だってはっきりわかんだね。やっぱTaruruさんの小説を…最高やな!新しい作品も書いて下さい!なんでもしますから! (2019年4月23日 14時) (レス) id: 4b90a239d3 (このIDを非表示/違反報告)
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