転職失敗【d!】

5万円 ページ6

”





「ありがとうございます」


ダンディーなマスターに小さく頭を下げて、コップを手に取った
自分でもわからないが、どうやら緊張しているようで丁度喉が渇いていた所だ


ｺﾞｸﾘ


「……ん」


ヒンヤリとした水が喉を冷ます
向かい側の男性は、テーブルに肘をついてニンマリとしている



??「……あ、自己紹介忘れとったわ」

kn「俺はコネシマや！一応我々工場の幹部やらせてもらってます！」


「コネシマさん、宜しくお願いします」


コップをテーブルに置き、頭を下げると「礼儀のええ子やな」と褒められた



kn「早速なんやけど、えーっと……ハイ、これ」

「？」


渡されたのは4,5枚のA4サイズの書類といかにも高そうなペン
名前や住所を書く欄があり、このペンでここに書けば良いのだなとペンを手に取った


kn「…ん、物分りよくて助かるわぁ」

「はい、何度もこういうのは書いてきてるんで」


ペンを紙の上に滑らせながらコネシマさんの声を聞く


kn「やりながら聞いてな？」

「はい」


コネシマさんは「ん”ん”」と一度喉を鳴らせると職場のことについて話しだした


kn「我々工場は、掲示板にも書いてあったと思うんやけど」

kn「基本的には寮生活なんや」


kn「飯代、寮費、とかは給料から差し引かれる」


「なるほど………」ｶｷｶｷ


頷いてみせるが、正直あまり頭に入ってこない
緊張しているらしい、全然集中できないのだ


kn「仕事内容は……まぁ日によって変わる」

kn「あ、そこハンコな」


「あ、はい」


あったっけ、なんて思いながら自分のバッグの中に手を入れる


kn「多分女でも出来るんちゃうかなぁ、知らんけど」

「…私は何でも出来ますよ？」


下に見られたのが少し悔しかったので、遠回しに「舐めるな」と言い放つ


kn「…ま、頑張ったらええわ」

kn「うちは学歴とか関係あらへんし、なんなら中卒の奴もおる」


kn「俺的には楽しめる思うで！」


「…ふぅん………」


書類に全ての必要事項を書き記すと、コネシマさんはそれを取り、立ち上がった
………何するんだろう………


kn「ま、家の引き払いの手続きとか、家具の持ち運びとかはこっちでやっとくから」

kn「取り敢えず行こか！」


「え、あ、え……どこに………」


立ち上がったコネシマさんに手を差し伸べられるが、流れの速さについて行けない
手を取りながら聞いてみると、


kn「Aは付いてくればええんやで！」


とはぐらかされてしまった

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