第44話〜 一人じゃない〜 ページ44
イラーダside
今までのアメフラシとは比にならないくらい空気を振動させ歌い続けるAに私は目を奪われていた
『…失われし生命よ、時間を戻し
運命を、紡ぎなおせ
我は欲する、美しき姿をー…』
Aの歌によって枯れ果てていた植物は
生命の息吹を吹き替えした
そして皆が口を揃えて
ワナワナと震えながら言った
全員)…さ、砂漠の潮が…咲いた
『この国をこのお花で埋め尽くすんだから
それにこの花はー』
A)あなたの瞳の色と同じですね
その瞬間に私は
長い長い呪縛から開放された気がした
世界はどんなに抗っても
更なる厳しさで返してくる
それが悔しくてならなかった
だけど、今そんな気持ちは
どこか遠くへと消えていた
そして、Aがある人物と重なった
死んだはずの
大切なたった一人の妹
『ガシッ…』
私は無我夢中で
Aを抱きしめた
もう消えて欲しくない
私を一人にしないでほしい
A)…あなたは1人じゃないよ
ほら、後ろを振り返って
イラーダ)え、
Aの声に私は
顔を上げて振り返ると
そこには私を心配そうに見つめる
民や従者たち、ファラハがいた
A)ほら、ここに生きる民やファラハだっている
だからあなたは一人なんかじゃない
いつだって誰かがそばにいてくれたはずだよ
Aはそう言って
私から離れた
イラーダ)…Aは本当に不思議だ
だけど、君のおかげで私は失いかけていた
心を取り戻すことが出来た
お礼を言うよ、ありがとう
私はAにそう言って
頭を下げた
A)ちょ、頭をあげてください
むしろ、頭を下げたいのはこちらなんですから
イラーダ)？
私は不思議そうに首を傾げると
A)私はイラーダさんと結婚はー、
ちょっと…
モジモジとする
Aに私は笑いながら答えた
イラーダ)大丈夫ですよ、少し無理やり過ぎましたね でも諦めませんからね？
その言葉にAは
驚いた表情をしながらも笑った
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作者名：神姫 | 作成日時：2017年12月4日 1時
