第41話〜あなたでなくては〜 ページ41
Aside
イラーダさんはとても良い人だ
民のために尽くせる王様は数少ないと思うから
だけど、私の心には
ずっとリヴィが消えずに残っていた
消したくても消せない
どうしたら、いいのかな？
『…A、逃げて』
空の声がそう聞こえたと思うと
急に空気が変わった
まさか、この風は
嵐と同じもの…
イラーダ)A？
A)早く、逃げなきゃ
ここにいたらみんな、飲まれちゃう…
私は取り乱しそうになりながら
必死にイラーダさんに伝えた
イラーダ)まさか、砂嵐がー、
身を隠さなくては
急ぎましょう
イラーダさんを守らなくては…
私たちは馬のところまで行くと
砂嵐はもうすぐそこまで迫ってきていた
この勢いじゃ、巻き込まれて
イラーダさんの命が危ない
私は立ち止まり、
イラーダさんに言った
A)…イラーダさん、逃げてください
私はこの砂嵐を止めます
イラーダ)何をおっしゃっているのですか
そんなこと出来るはずないでしょ
私はイラーダさんに
少し微笑んで何も答えず砂嵐に向かって歩いた
普通の人には砂嵐に見えても
私にはたくさんの人の苦しい気持ちが集まってできた命の歌に見えていた
私はそんな歌に優しく
自分の歌を重ねた
『…憎しみを糧に生きることを知るといい
…生命は尊い、悲しみにくれる日もあれば
…歓びにわく日もあるだろう』
『…限りある生命、
…繋ぐのは己の心と光のみ』
すると砂嵐は
静かに小さくなり私の手元でゆっくりと消えた
人々の苦しみは大きくなれば
争いを招く
そうなる前に消すことがマナとしての
大切な使命なのではないかと私は空に訊ねると
『…そうかもしれないね』
空は小さくそう答えた
『フラッ…』
あれ？私は目の前が急に霞んで見えた
どうしたんだろ
少し力を使いすぎたのかな？
身体が上手く動かないや
私はその場で
倒れ込んで目を閉じた
リヴィ…
こんな時でも私の頭をよぎって仕方がない
私はリヴィに会いたい
他の誰でもないあなただけに
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作者名：神姫 | 作成日時：2017年12月4日 1時
