♯003 あの夜に ページ3
Aside
色人に会えたのは
『運命』だと思う
私はピアノを弾きながらよく思う
だけど、
色人はきっと、私に会ったことを後悔するかもしれない
そう思い、私は一度手を止めた
そして再び、別の曲を弾き始めた
パッヘルベルの『カノン』
最初の方は、ゆっくり、ゆっくりと
奏で、サビで一気にリズムにのせていく
そんな曲
この曲はまるで色人のよう
明るくて、どこか不思議なあんな人を
私はずっと心から待ち望んでいたのだと思う
いつかこの命が尽きるまで
どうか、あの人の隣にいられますように
そう願いを込めながら、弾き続けた
すると、何かの拍子に
封筒が、落ちて私の足元に転がった
色人)A〜♪
あれ、何か落ちてるよ
その手紙をヒョイっと拾い
色人は中身を見た
色人)やっぱり、Aは
ピアニストなんだね、
へぇ、コンサートとかあるのか
俺も行きたいな
色人は嬉しそうにそう言ってくれた
A)…色人が来るなら
そのコンサート出る
本当は行く気はなかった
だけど、色人が見ていてくれるなら弾きたいそう思えた
色人)本当？嬉しいな
ねぇ、A、初めて会った時の夜を覚えてる？
色人が急にそんなことを尋ねてきた
私は首を傾げていると
色人)あの夜に、俺は君の両親を殺して
君まで、手にかけようとした
だけど、あの時君はなんて言ったか覚えてる？
A)えーっと、…たしか…
A/色人)…ありがとうって…あ！
言葉がハモり、2人で笑いあう
そうだ、私はあの時、彼にすごく感謝をしていたんだ
閉じ込められたこの家から私を見つけてくれて
ありがとう、そう意味を込めていたのかもしれない
A)…色人
私は彼の袖を引っ張り
呼んだ
色人)ん？なに？
A)…いつもありがとう
これからもよろしくね
そう言うと、色人は顔を真っ赤にさせて
色人)あ、あ、当たり前だよ！
早く、ご飯食べよ
A)うん！
これからもずっと色人と生きていきたい
私はそう心に願った
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作者名：神姫 | 作成日時：2019年6月11日 8時
