二十九話 ページ31
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真っ暗な部屋。少し埃っぽい。
ああ、ここ、何時間いるっけ。わかんねぇけど、結構長い時間いすぎて、そろそろ限界かもしれない。
「ほら、頑張りなよ、誰だっけこの位で堕ちないって言ったのは」
「…殺してやる」
「僕を殺せば政府から怖いお兄さんが来て、まず君が処分されちゃうよ。まぁ僕は死なないけどね。」
またドクンと波が跳ね上がる。
尋常じゃない暑さに、何度も冷たい息を吸い込むが直ぐに溶けてまた身体が熱を持つ。
そんな悪循環の中、僕はずっと溺れていた。
「ほら、もうそろそろ言いなよ？」
蛇の鱗が僕の首を沿う。
しゅるると瞳を舐められて、それを止めることも出来ない僕はただ目の前の瞳を力なく睨むことしかできなかった。
「僕をあなたの物にして下さい…ってさ」
言うわけねぇだろ。
蛇は、壁に寄りかかって蹲る僕にどんどん擦り寄ってくる。
足を、腕を、お腹を、首を硬い鱗で沿いながら僕の体を熱くしていく。
気持ち悪い。気持ち悪いな。
「……もう、あんたとは関わらないから」
ひゅ、と空気が抜ける喉からやっと絞り出した言葉に、目の前の瞳が大きく見開かれる。
そして、そのあと辺りを劈くような殺意に、僕の体を這っていた蛇が消えた。
「…今、なんと？」
にっこりと笑っているが目が笑っていない。
「だから。もうあんたの顔なんて見たくないって言ったんだよ。」
僕は残滓となった力でなんとか立ち上がり、壁をぶち破る。
その前には縄で縛り付けられた僕の刀があって、周りにはこれでもかと札が貼り付けられていた。成る程な、このせいで。
その縄に手をかけた刹那だった。
「……赦さない。君はもう僕のものだ。」
ぞわりと背中が冷える。指が固まり、身動きが取れない。そんな中、ヒタヒタと背後から近寄られているのは研ぎ澄まされた神経から手に取るように伝わってきた。
ーーやばい、
怒らせたのは僕だ。
いやまあ、こうなるのはわかってたんだけど。
「…まぁでもいいや。今機嫌がいいから、このくらいでやめといてあげる。」
「…ヒッ…、っ！」
カプ。牙が首を刺す感覚。
何かが身体の中に入ってくる違和感。
「ほら、大好きなお兄ちゃんのところへ行っておいで。」
カクンと膝が折れ、それと同時に背後の気配もなくなった。
「…ぅ…っ」
ただ、また夏のような暑さが体を蝕み始めていた。
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音琥(プロフ) - すごい感動しました・・・！僕（僕ッ娘です)も薬研の小説を書いてるんですがちょっとまだ設定が不安定で（） こうやってお話ができあがってるの、すごいなと思いました（） 尊敬してます。薬研の作品・・・Tauさんのが一番好きです笑 (2019年8月24日 9時) (
レス) id: 13c9a9eef6 (このIDを非表示/違反報告)
Tau(プロフ) - 霊界堂銀さん» 返信が遅れてしまい、申し訳ありません…コメントありがとうございます。泣いて下さるなんて… 薬研の寝たふりの場面は、重要な場面だったので頑張って書いた甲斐があります。最後までお付き合いありがとうございました！ (2017年8月19日 21時) (レス) id: e144e48524 (このIDを非表示/違反報告)
霊界堂銀(プロフ) - すごい勢いで泣きました。もう薬研のねたふりのところがヤバかったです！これからもがんばってください！応援しています！ (2017年7月15日 18時) (レス) id: 3572e18a01 (このIDを非表示/違反報告)
Tau(プロフ) - まるさん＠地球領さん» 初めまして、コメントの返信が遅れてしまい申し訳有りません… 本当ですか！感動を与えられるような小説が書けて良かったです。もし気に入っていただけたのなら、また読み返して見て欲しいです^ ^ 最後までお付き合いありがとうございました (2017年4月30日 21時) (レス) id: 94fb074fe3 (このIDを非表示/違反報告)
まるさん＠地球領(プロフ) - この作品で、刀剣乱舞の小説で初めて泣きました…！感動的なお話、有難うございました、！(＠⌒ー⌒＠ (2017年2月9日 13時) (レス) id: 16bde0c68d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Tau | 作成日時：2015年12月5日 1時
