十六話 ページ17
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本丸の中はいつにも増して大騒ぎだった。
殆どの刀剣が戦闘場から帰還し、傷を負ったものが多数出たからだ。そしてそんな時に限って主の姿が見当たらない。
「薬研！わりぃが先にこいつみてやってくれ！」
「別にいい！このくらいの傷…」
「倶利ちゃん重傷なんだから！」
そしてもう一つは、第三部隊の出陣先で検非違使に出会したということ。
危機一髪で呑まれずには済んだが、この本丸で一番経験のある大太刀や薙刀でさえ重傷を負った。
先程出陣から戻ってきた薬研も休んでばかりはいられない。白衣に着替え、刀剣達の傷に合う薬を作った。
「お風呂！薬湯入れてきました！軽傷程度なら傷は癒えるので、先に入れる方から！」
血腥い大広間に堀川が声をかける。
出陣で泥だらけになった短刀や脇差を先に、傷が深い打刀やそれより上の刀達を残して二手に分かれる。
「旦那、足の傷は後で主にも診てもらえよ。俺っちは血は止められるが消えた霊力までは治せねぇからな」
「……悪い」
「気にすんな、おつかれさん」
傷口が深かった部隊長の大倶利伽羅の手当てを終えた頃、辺りを見渡せばちらほらと回復した刀剣達もいた。
手入れ部屋も空いたようで、取り敢えずは大丈夫らしい。
「いやーまいったねぇ。まさかあちらから奇襲をふっかけてくるたぁ驚きだ。」
とん、と後ろから凭れ掛かってくるのは鶴丸だ。首元にかかる長い襟足の髪がくすぐったい。
それに、まだ血の臭いがする。
「鶴丸の旦那、あんた傷あんじゃねぇのか」
さっきの血相を変えたお人は何処へやら、呑気にまた飄々と笑う鶴丸にそう問いかける。
「いや、俺は返り血だけだぜ。久々に楽しい出陣だったからな、血を浴びすぎた。」
「理想の鶴にはなれたかい」
「はっはっは！見た通りボロボロだ。」
真っ白な衣装が真っ赤に染まっている。
これじゃ鶴には見えねぇな！とまたケラケラ笑う鶴丸は、自身の血も抜けているはずなのに全く気にせず立ち上がって奥の大浴場へ向かっていった。
(まぁ、あんたらしいよな)
自分が崩れてもなお笑っていられる強さは、同じ主にも仕えたあの頃から何も変わってはいなかった。
「薬研」
よっこいせと腰を上げた薬研をまた誰かが呼び止める。
振り向くとそこには、まだ正装のままの長谷部がいた。
「話がある」
相変わらず堅気な表情でそういった長谷部が行く方へ薬研は少し後を追っていった。
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音琥(プロフ) - すごい感動しました・・・！僕（僕ッ娘です)も薬研の小説を書いてるんですがちょっとまだ設定が不安定で（） こうやってお話ができあがってるの、すごいなと思いました（） 尊敬してます。薬研の作品・・・Tauさんのが一番好きです笑 (2019年8月24日 9時) (
レス) id: 13c9a9eef6 (このIDを非表示/違反報告)
Tau(プロフ) - 霊界堂銀さん» 返信が遅れてしまい、申し訳ありません…コメントありがとうございます。泣いて下さるなんて… 薬研の寝たふりの場面は、重要な場面だったので頑張って書いた甲斐があります。最後までお付き合いありがとうございました！ (2017年8月19日 21時) (レス) id: e144e48524 (このIDを非表示/違反報告)
霊界堂銀(プロフ) - すごい勢いで泣きました。もう薬研のねたふりのところがヤバかったです！これからもがんばってください！応援しています！ (2017年7月15日 18時) (レス) id: 3572e18a01 (このIDを非表示/違反報告)
Tau(プロフ) - まるさん＠地球領さん» 初めまして、コメントの返信が遅れてしまい申し訳有りません… 本当ですか！感動を与えられるような小説が書けて良かったです。もし気に入っていただけたのなら、また読み返して見て欲しいです^ ^ 最後までお付き合いありがとうございました (2017年4月30日 21時) (レス) id: 94fb074fe3 (このIDを非表示/違反報告)
まるさん＠地球領(プロフ) - この作品で、刀剣乱舞の小説で初めて泣きました…！感動的なお話、有難うございました、！(＠⌒ー⌒＠ (2017年2月9日 13時) (レス) id: 16bde0c68d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Tau | 作成日時：2015年12月5日 1時
