十二話 ページ13
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地面に思いっきり転がる。
痛さに気が狂いそうだったが、僕の右腕は既に地面に叩き落とされて使い物になんてなりゃしない。
左手と脚だけでなんとか立ち上がる。よろりと影が揺らめき、月が敵の瞳に吸い込まれるように浮かび上がった。
しっかりと左手は柄を握る。
これは、賭けだ。しくじればきっともう二度と、本丸には戻れないけど。
一つ
二つ
三つ
「おらぁぁぁあああ!!」
振り下げられる槍の穂先に飛び乗る。そのまま穂先から飛び上がれば、その瞳は食いつくように僕を見る。
ーーー賭けは僕の勝ち。
そのまま一気に肩へ足を乗せ、左手に握る自身の刀を瞳にぶっ刺した。
次の瞬間、耳を抑えたくなるほどの咆哮が真下から放たれるが、その根を止めるように脳天へと刃を突き刺した。
敵が倒れる。地面へ叩きつけられるのは僕も同じで、捥がれた右腕の付け根が直に地面に擦れた。
「ってぇな…っ」
鞘へ刀を仕舞い、空いた左手で右肩を抑える。
出血が多すぎる為か、視界も足も覚束ない。押さえる左手はすぐに血の色に染まり、軍服は元が黒い為に目立つことはないが肌にべっとりと血糊がへばりついた。
川の水音が耳を掠める。
ぼたぼたと血を落としながら砂利を一歩ずつ歩くが、屋根の隙間から月が見えた途端に体の力がふっと抜けて崩れ落ちた。
「あきた…待ってる、のに……っ」
必ず戻ってくると約束したのに、こんなところでへばったらきっと秋田は泣いてしまうな。
地面を這うように左手で体を動かすも、何故かもうどうしようもなく眠くなってきた。
ーー誰か、誰か…
どくどくと血が流れる感覚を覚えながら、気を失った。
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音琥(プロフ) - すごい感動しました・・・!僕(僕ッ娘です)も薬研の小説を書いてるんですがちょっとまだ設定が不安定で() こうやってお話ができあがってるの、すごいなと思いました() 尊敬してます。薬研の作品・・・Tauさんのが一番好きです笑 (2019年8月24日 9時) (レス) id: 13c9a9eef6 (このIDを非表示/違反報告)
Tau(プロフ) - 霊界堂銀さん» 返信が遅れてしまい、申し訳ありません…コメントありがとうございます。泣いて下さるなんて… 薬研の寝たふりの場面は、重要な場面だったので頑張って書いた甲斐があります。最後までお付き合いありがとうございました! (2017年8月19日 21時) (レス) id: e144e48524 (このIDを非表示/違反報告)
霊界堂銀(プロフ) - すごい勢いで泣きました。もう薬研のねたふりのところがヤバかったです!これからもがんばってください!応援しています! (2017年7月15日 18時) (レス) id: 3572e18a01 (このIDを非表示/違反報告)
Tau(プロフ) - まるさん@地球領さん» 初めまして、コメントの返信が遅れてしまい申し訳有りません… 本当ですか!感動を与えられるような小説が書けて良かったです。もし気に入っていただけたのなら、また読み返して見て欲しいです^ ^ 最後までお付き合いありがとうございました (2017年4月30日 21時) (レス) id: 94fb074fe3 (このIDを非表示/違反報告)
まるさん@地球領(プロフ) - この作品で、刀剣乱舞の小説で初めて泣きました…!感動的なお話、有難うございました、!(@⌒ー⌒@ (2017年2月9日 13時) (レス) id: 16bde0c68d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Tau | 作成日時:2015年12月5日 1時