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そう問いかけると彼はもう一度、ずいっとオレンジジュースを近づける。
「くれるってこと?」
私の言葉に彼はまた、今度は嬉しそうに頷いた。喉も乾いていたしありがたくそれを受け取ると、パッケージになにやら書かれていることに気付く。
1日お疲れ様、油性ペンで書かれたその言葉の横に添えられているのは多分くまのイラスト。多分、なんて言葉がついてしまうのはくまと呼ぶにはあまりにも歪で若干の怖さがあったから。だけど満面の笑みで嬉しそうにしている彼にこれくま?なんて聞けるわけもなく、私も笑って誤魔化してそのオレンジジュースに口を付けた。
「<誰か待ってるの?>」
「うん。」
わざわざスマホを取り出し尋ねて来た杠葉くん。私が放課後、特に用事はないけれど寮に帰るでもなくこの場に残っているのは今から買い物に行く予定があるから。それもローレンと一緒に。だけど彼は少し先生に呼ばれているから教室で待っていてくれと、メッセージを送って来たのだ。それに了解の返事を返して私は1人、残っている。
「<そうなんだ、俺はそろそろ行くね。>」
「うん、じゃあまた明日。」
ひらひらと手を振る彼に私もまた手を振って、後姿を見送る。オレンジジュースを啜りながら何となくSNSを見て時間を潰していると、そう時間も経たないうちに廊下の遠くの方から足音が聞こえてきていた。ドアへ視線をやるとほぼ同時、開いたドアから見えた赤髪。
「Aー、帰んべ。」
「はーい。」
丁度飲み終えたジュースをゴミ箱に入れて、迎えに来てくれたローレンの隣に並ぶ。
「どこのスーパー?」
「歩いて15分くらいの駅前のところ。」
「ああ、あそこな。おけ。」
寒さが肌を刺激してくる今日この頃、日が暮れるのもすっかり早くなり窓から差し込む光はもうオレンジ色をしていた。伸びる影が私たちを形作る。私たちの影が体格の差をありありと見せつけて、ああローレンもちゃんと男の子なんだよなあなんていつもは思わないことを思ってしまうのもきっとこのオレンジのせい。
「なあ、そういやさっきのって?」
「さっきの?」
「すれ違ったんだよ、背の高ぇ見慣れない男子生徒。あれ3組だろ?」
「ああ、彼ね。うん、転校生。」
「は?転校生?」
「そう、ウチのクラスにも来たんだよね。」
「へえ、そうなん。」
自分で聞いてきたくせにそこまで興味がなかったのか、すぐに話題は次へと変わった。
「(…どっかで見たことあるような気すンだけどなァ)」
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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時