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返事は聞こえない。部屋からは時計が自分の役目を果たすようにリズムを刻む音だけが響いている。そして玄関には彼女の靴も並んでいなかった。背中には嫌な汗が伝う。3組の寮に体格の良い男子高校生7人が入ることは出来ないためローレンと葛葉が代表して中に入っていた。初めてAの部屋に入る葛葉は物珍しそうに視線を彷徨わせながら色々と見ていた。対してもう何度もAの部屋に来ているローレンは小さなテーブルの上に置かれたカレンダーの前で足を止めた。

 Aの部屋、テーブルの上には毎日捲るタイプのカレンダーが置いてある。几帳面さを持っているAは毎日ちゃんとこのカレンダーを捲る。それが土曜日から日付が変わっていないのだ。その日と言えばバイトに出掛けたAが体調不良だからと早退し、ローレンとの約束が守られることがなかった日である。

 そういえば、とローレンは思い出す。そしてスマートフォンをポケットから取り出し、Aとのトーク履歴を開いた。そして一番最近の会話と、それ以前との会話を見比べる。そしてやはり感じる違和感。何と言うか、それ以前の会話と見比べてもどこか素っ気ない感じがしてしまうのだ。普段は絵文字やスタンプを使うことが多いAが、文章だけで淡々と会話をしている。体調不良だったから、と言われればそれまでだけど。

 頭を捻らせるローレンの後ろ、キッチンに入った葛葉はシンクを覗き込む。水滴1つついておらず、乾ききったシンク。綺麗に拭き取られている、というよりも使われていないという感じが強いように見える。次に冷蔵庫を開けた。中には食材等が入っている。そのなかのひとつを手に取り、裏返しにしてみれば消費期限が過ぎていた。次に手に取った牛乳も、同じく期限が過ぎている。

「Aが食材の期限切らすことってある?」
「え?あー、分かんねえけど、多分ないと思う。そういうの気にするタイプだし。」
「冷蔵庫のなか、期限切れてる奴結構あるんだけど。」
 
 葛葉の声にローレンも同じく冷蔵庫を覗く。そして確信したように口を開いた。

「…俺がAと最後に連絡取ったのが土曜日、日めくりカレンダーもその日のまま。」
「ってことは、彼奴はその日から寮に戻ってきてない?」

 どんっ、と心臓が一際大きく脈打つ。嫌な汗が背中を伝った。

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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時

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