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この考えが杞憂に終わるのならばそれでいい。インターホンを押したあと、その扉が開いていつもの調子でどうしたの?なんて驚いた顔をしながら出てきてくれるならそれで。
行動するのはその日の夜にすることにした。理由は単純、監視の目が薄くなるからである。勿論教職員は退勤するし、監視する役目の警備員も一人だけになる。昼間と比べて圧倒的に監視が手薄になり、3組寮へ行きやすくなるのだ。
とはいってもやはり落ち着かない。意味もなくうろうろと歩いたり、何度もお茶を飲んだり、SNSを見てはスマホの電源を落としてを繰り返したり。とにかくまあ全員が全員落ち着きを無くしていた。食欲はあまりないが、それでも何かを腹に入れて満たそうとストックしてあったお菓子やパンなどを食べた。冬は日が暮れるのも早く、18時を少し過ぎれば辺りはすっかり暗くなっていた。
「そろそろ行くか。」
葛葉の一声で全員が立ち上がる。玄関を開け外に出た先、向かったのは3組寮とは反対の駅がある方向だった。というのも、これも作戦のうちのひとつ。彼らが旧校舎へと出入りしていることを知った教師陣は、監視目的でカメラの設置台数を増やしこれまでなかった生徒会寮の玄関先にもカメラが配置されるようになったのだ。
そのため生徒会メンバーは一度駅方向へ向かい、カメラの死角に入った段階で甲斐田の異能を使って姿をくらませてから3組寮へ行くことにした。いくら監視の目が少ない日が暮れてからの行動とはいえ、見つかるリスクは少しでも減らしておいた方が良い、だからこうしようと提案した葛葉の声に反論する人間はいなかった。
「…にしても、こんなカメラ設置されてたんや。」
「改めて見ると凄い数ですね。」
引いたような声色で会話する不破、そして加賀美。少し上を見上げただけで目につくほどの台数のカメラが彼らをじいっと見ていた。理想の学園を守るために必死な、体裁だけを気にした大人たちの黒い部分がありありと目に映る。増えたカメラの台数分、加担している汚い大人たちが見える。不破は奥歯をぐっと噛み締め、口から出かけた本音を飲み込んだ。今じゃない、まだその時じゃないと。
学園を離れ駅方向へと近づくにつれ、人目を気にしたようにカメラの台数は減っていく。それまで等間隔に置かれていたくせに、学園以外の人間の姿が見える場所になった辺りからその数をめっきり減らしてしまう。これもまた、彼らの目には外部を恐れる大人の姿が映っていた。
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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時