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背凭れに力を預け、息を吐き空を見上げる。公園にいるのはローレン一人だけ。周囲に誰もいないこの状況では聴覚が嫌でも過敏になる。木々のざわめき、鳥のさえずり、車が通りすぎる音。自然の音で溢れたこの状況では、まるで自分が世界に一人だけであるかのように錯覚される。そんなわけはないのに、そんな気がするのだ。
そんな彼を現実に引き戻すように、スマートフォンに通知が届く。
ごめん、体調悪くて早退した。
簡潔にそう書かれた文章、送り主はAである。いつもよりなんだか素っ気ない文章のように思えたが、そうか、体調が悪いならば仕方ない。それならばコンビニで何か買って帰ろう。離さなければいけないことはあるが、何も相手が病気の時でなくても良い。ローレンは立ち上がり、公園を抜ける。そして駅の方向へ戻り、近くにあるコンビニへと入った。お茶やゼリー、レトルトの御粥。必要なものを次々とカゴへ入れてさっさと会計を済ませる。早く寮に戻らなければ、焦る気持ちが行動に出て少し小走りになってしまう。そして駅に向かって走っていた矢先のこと、乱暴に腕が引かれ建物と建物の間に体が引きずり込まれる。
乱暴なそれに体は地面に叩きつけられ、いくら数々の人間を相手にしてきたローレンでも不意の出来事には対応できなかった。じくじくとした痛みが叩きつけられたその個所を刺激する。
「ってェ…何だよ。」
見上げると目の前にいたのは見覚えのない、仮面を付けた人間。それも一人じゃない、いつの間にか囲まれていたようで同じような風体の人間が何人かそこにいた。これはまずいと、過去の経験がそう語る。
「誰だよ、お前ら。」
体を起こし、服の汚れを払う。手に持っていた荷物を隅に置いて囲んでいる人物たちを見つめた。しかし仮面の人間たちは何も言わない。ただ静かに拳を構え、手に持っていた鉄パイプやナイフといった獲物たちを構える。久しぶりに向けられた、本気の人間の雰囲気。殺してやるという明確な気持ちを感じる。
一体どうしてこんなことが起こっているのか、何の理由があって自分が見ず知らずの人間に殺意を向けられているのか。分からないが今は目の前の人間を片付けることを優先しなければ。そして早く帰らないと。
「__お前らがそんなん俺に向けて来てるんだったらこっちも手加減なんていらねェよな。」
ぼうっ、と激しく燃え上がった炎が刀を形作る。それを構え、いつものように深く息を吸って、吐いた。
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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時