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主には戦闘の時、生まれ持った運命として主人であるAを命に代えても守らなければいけなかった。そういう場面においては、冷静さを欠いた者から順番に負けていく。感情を全面に押し出して、考えることもせずに腕を振るう。そうすることで視野が狭くなり、徐々に見えなくなっていくのだ。

 今ローレンの中には、そのときと同じくらいの緊張感があった。距離が近いからこそ、言い出せないこともある。これからの話次第で、関係性がこれまでと少し変わってしまうかもしれない。でも、このままでいいわけがない。だから今、その一歩を踏み出そうとしている。

 時間がやって来た。財布とスマートフォン、鍵。必要最低限のものを持って家を出る。空はローレンが感じている不安や怖さとは裏腹に青く澄み渡っている。それを見上げるだけでなんだか、少し背中を押してもらえたような気がした。

 最寄りの駅、改札を抜けホームに到着したところでタイミングを計ったかのように電車が到着する。休日であるために少し人は多いが、それでも座席に座ることは出来た。横に長い座席、一番端っこに身を寄せると少し距離を開けて隣には同年代くらいの女子が座った。小柄な体系が、最近よく顔を見せるとある女生徒を彷彿とさせる。

 加藤、と名乗ったその女生徒は甲斐田のクラスに転校してきた人物である。ある日生徒会に顔を見せてからというもの、そこからぐいぐいと生徒会メンバーと距離を詰めて来た。正直に言えば、うざったい。しかし何度冷たい態度を取ろうとも強靭な心を持っているのか近づいてくるのが加藤であった。鬱陶しい、加藤がやって来る度に頭をその文字がぐるぐると回る。

 あともうひとつ、ローレンはその加藤とはどうも初対面ではないような気がしていた。だがどこかで出会っていたとして、その「どこか」が思い出せない。例えば今隣に座る女生徒のことなんてきっと目的地の駅を降りれば忘れる。しかし、その程度の存在ではなかったような気がするのだ。もやもやとした気持ちを抱えたまま、電車は目的地へとローレンを運んできた。

 Aがバイトを終えるまでまだ少し時間がある。その間時間を潰すために、近くの商店街をふらふらと歩く。並んでいる様々な店から香って来る惣菜の匂いが、空腹を刺激した。やがて近くの小さな公園に辿り着き、2人掛けのベンチに腰を下ろした。

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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時

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