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されるがままさっさと片付けてしまった彼らは各々教室から出ていく。去り際、こちらにごめんと謝ってくれるが何も私に謝ることなんてないだろう。呼び出されたものは仕方ないのだから。私は大丈夫と手を振って見送る。

 一番最後に出て行った加藤さんは何やらこちらに意味ありげな視線を寄越したけれど、早々に私は逸らしてしまった。

 一人残された教室、まだ半分も食べきれていないお弁当が寂しく残っている。再び席に座って、お弁当を黙々と食べていると開いた扉。誰かが忘れ物でもしたのだろうかと顔をそちらへ向けたとき、立っていたのは杠葉くんだった。

「…タイミング良すぎだよ、杠葉くん。」

 私の言葉に意味が分からない彼は首を傾げたが、それでも親指をぴこんっと立ててグーサインを私にくれた。

「お昼、まだなら隣に来ない?一人になっちゃった。」

 彼の腕に抱えられた大量のパンを見る限り、お昼ご飯はまだ食べていないのだろう。いつもはローレンが座っているその席に杠葉くんを呼べば彼も誘われるまま隣に座る。

「早く食べちゃおうか、遅れたらまた怒られちゃうし。」

 私の心中なんて露知らず、彼は元気いっぱいの笑顔で頷いたその後パンの包装紙を破いて大きな口で齧り付いた。



 一度溝を感じてしまえば、それを修復するのはもう難しいのかもしれない。所詮私は生徒会にとってはただの雑用だし、ローレンや晴、ガクから見れば極悪人。元から居場所なんてないも同然だし、ローレンたちだってただの惰性、…もっと言えばあの村にいたころの名残で一緒にいてくれているだけかも、なんて。こんな考えを抱くようにまでなってしまった。

 気づけば私は必要最低限の会話しかしなくなって、同時にまた生徒会メンバーもどうやら旧校舎に来ていたことが教師陣にバレてしまったらしく私から行くことがなければ顔を合わせることすらなくなった。あれほど一緒にいたローレンは生徒会のメンバーとして仕事を任せられるようになったようで、前ほど一緒にいることもなくなって。相変わらず夕飯を一緒にすることはあるけどそれも回数が格段に減った。

 私の方も杠葉くんと一緒にいることが増えて、空き教室で昼食をとる相手はすっかり彼に変わっていた。今まで7人もいた教室は2人だけだとどうにも広く感じていたがこれが当たり前。本来の姿なのだ。

 変わったんじゃない、あるべき姿に戻っただけ。…なのにどうして、こんなにも寂しいなんて思ってしまうのだろうか。

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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時

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