・(新しいお話です) ページ21
旧校舎から本校舎まで続く渡り廊下を歩く。廊下を歩いたその先には扉を一枚隔てているだけだけど、ほぼすべての人間が私に対して嫌悪の視線を向ける。能力に重きを置いて、一般的な能力を持たぬ私た下に見られ、使えないと悪態を吐かれる。
案の定、扉を開けては本校舎に入った瞬間から突き刺さる視線。無能が何をしに来たんだと、隠すこともない声さえぐさぐさと心を刺していく。
人間という生き物は、考えられる頭を持っているくせに時折その考えが及ばない時がある。
目の前に人や犬、猫などの動物がいても彼らを殺してはいけないという認識は当たり前に持っているくせにそれが目に見えない「心」に変わった瞬間平気で傷つけてしまえる。それが私は恐ろしく怖いことだと思う。目に見えて傷が分からないからこそ、その傷口を確かめる術さえ私たちは持っていないというのに。くしゃくしゃに丸められた紙をいくら丁寧に延ばしたとしても、跡は決して消えない。記憶に深く根を張りほんの些細な瞬間にでも思い出すそれはまさしく呪いだ。
そしてまたこの呪いを掛けた人物は、それさえ忘れて今日も普通に生きている。
ま、こう考えるが入学してからずっと心無い言葉を掛けられる私はついに恐れていた「慣れ」が出てきてしまっているのだけど。どれだけ使えない無能だと罵られようとも、麻痺した心は悲しい、悔しいという感情さえも奪って行った。
会長の教室まで行くには少し距離がある。なるべく他の生徒と視線を合わせないように俯きながらさっさと歩く。聞こえてくる言葉は無視、投げつけられる物にも特に反応せず真っ直ぐ教室を目指す。
「あれ、Aさん?」
「ぁ、加賀美先輩。」
3年1組の教室までもうすぐというところ、近くにあった男子トイレから出て来た加賀美先輩と偶然鉢合わせになった。
「こんにちは。」
「はい、こんにちは。Aさんはどうして此方に?」
「会長の忘れ物を届けに来ました。」
「…今日は生徒会での集まりがある日ですから、わざわざこちらまで来ていただかなくても生徒会室にいらしたらよかったのに。」
「…あ、そっか。」
そうか、今日は生徒会で集まる日か。ならわざわざ不快な思いをしてまでこんなとこ通るんじゃなくて素直に生徒会室に行けばよかった。
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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時