能力だけが全てじゃないと5【2j3j】

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さて、目当ての教室に着いた。扉に手を掛けてなかに入ると当然そこには誰もいない。当たり前か、まだ授業やってる時間だもん。いつも会長が座っている席に近づいてみるが、机の上にはなにも乗っていないし、横に何か掛かっているわけでもない。

　となると残るは引き出しか。膝を折り曲げ屈んでなかを覗くと、入っていたのは白い小さなケース。手をなかに入れて取り出してみると、それはワイヤレスイヤホンのようだった。これなら私も会長が使っているところを何度か見たことがある。忘れ物はこれのことか。

　見つけました、そうメッセージを返すと瞬時に既読が付く。この人いま授業中だよね、なんですぐ既読付くんだ。堂々とスマホ触ってるのかな、…うん、簡単に想像付く。

　ありがと、そのまま持ってて。そのメッセージの後に変な生き物のよく分からないスタンプまで送られてきた。えっ、何これ。犬？いや猫…ライオン、にも見える。真相が分からなすぎるそのスタンプだけど妙に目が惹かれるのは何故だろうか。…これ私も買って誰かに送ってみようかな、どんな反応するだろう。剣持くんはきっと引き気味でなにこれ、なんて言うんだろう。想像して少し、笑えた。

　それにしてもこういうスタンプってどうやって見つけるんだろ、友達同士で共有してるとか？すっかりそのスタンプが気になってしまった私は会長から送られてきたそれをタップしてストアページへと飛ぶ。

　へえ、結構色んな種類あるじゃん。指をスライドさせていくつか見てみて、気に入ったものを一種類購入する。これを誰かに送った時の反応が楽しみだ。リアクションを想像して、笑みが漏れた。

　そうこうしていればもうすぐ授業が終了する時間。私たちは帰りのHRもないだろうし(ちゃんとしたHRをするときは事前に連絡があるのだ。それ以外で一応私たちのクラスの担任の肩書を持つ人物が授業以外でやって来ることはまずない)。

　空き教室から出て教室に向かい、さっさと自分の荷物をまとめる。杠葉くんは私の様子をなんとなく目で追いながら、何やらお菓子を食べていた。

「帰らないの？」

　私の問いかけにかれはこくんと頷く。それからスマホを操作して見せてきた画面には、少し用事があるからもう少し教室にいると書かれていた。

「そっか。じゃあ私は行くね。」

　ひらひらと手を振り見送ってくれる彼に私も手を振り返し、私は本校舎を目指して歩き始めた。

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