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その連絡が届いたのは6時間目の授業を受けている真っ最中のことだった。意識が現実との間を彷徨い、首が頭の重さを支えることが出来なくなって重力に従いかくんと落ちる。その度に危ない危ないと、と体制を立て直して背筋を伸ばしてみたり頬を軽く叩いてみたり。しかしそれでも午後の眠気には逆らえない。

 そんな折、ブレザーのポケットに入れていたスマホが振動して通知を知らせる。しまった、電源を切り忘れていたらしい。授業中は教師の反感を買わないように常に電源を切るようにしているのだけど、昼休みに触っていたためそのまま電源を切ることを忘れていた。

 流石にバイブレーションだけでは教師も気づかないようで、黒板に向かいチョークを片手に淡々と授業を続けていた。教師の視線が私たちに向けられることはなく、そして私たちもまたそれに対して何か言うこともない。教壇を境にして目には見えない壁がそこにはしっかりと存在している。コミュニケーション?そんなもの、私たちの間には成立していないのだ。

 黒板に書かれている文字をそのままノートに写しながら、眠気に耐えていると予想していた時間よりずっと早く授業は終わった。教師が教室から出ていく後姿を見届け、そのメッセージは一体誰かと確認すれば意外な人物、会長からだった。

 連絡先なんて交換していたかと思いながらトークを開けると、簡潔な文章が並んでいる。


 教室に忘れ物したから放課後届けて欲しい、そう書かれていた。


 丁度早く授業も終わったしと、先ほどまでいたあの空き教室へ再び向かう。基本クラスメイト達はあの教室から出てくることはない、だから今こうして廊下を歩いているのも私一人だけ。

 あのクラスは、3組生徒にとっては唯一安心できる場所なのだ。授業で教師が自らやって来る場合を除いて、あの教室にいれば誰からも何も言われることはない。一歩外に出れば他のクラスや教師の誰かと会う可能性があって、そうすれば向けられる視線も、言葉も、態度も全て、どれも酷いものばかりだから。自分も守るためにも、あの教室にいることが安全なのだ。自分が傷つかないように、自分を守るために。

 まあ有難いことに、その環境に慣れてしまうのが人間という奴で。現に私も生徒会メンバーと関わるようになってから本校舎に行くことが増えたため向けられる数々の言葉たちに対してスルースキルが付いたからある程度は躱せるようになったのだけど。

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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時

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