・ ページ19
割と世話好きのその人は、わざわざ湯船まで張ってくれたらしい。脱衣所で衣服を脱ぎ、風呂場の扉を開けたところで特有の暖かい熱気が肌を直接包んだ。
「言うの忘れてた！入浴剤買ってきてある！」
「はーい、ありがと。」
脱衣所の扉の向こう側、聞こえているのにわざわざ声を張って伝えてくれたなるせに視線を彷徨わせる。すると足元に置いてあったバスボール。中から有名キャラクターの小さなフィギュアが出てくるやつだ。彼はいつまで私を子どもだと思っているのだろうか、まあこれで喜ぶ私も私なんだけど。
先に髪をと体を洗い、そしてパスボールを手に持ってともに湯船へと体を沈めた。しゅわぁ、と溶け出して透明だったお湯を薄いピンク色へと染めていく。しばらくして浮かび上がってきたカプセル、蓋を開けると和やかな表情をした愛らしいキャラクターが顔を見せる。
そのキャラクターをなんとなく手で弄びながら、しばらく湯船に浸かる。あまり早く風呂から出るともっとちゃんと浸かって来なさいと親のようなお叱りを受けることになるのが分かっているからだ。
10分くらい経っただろうか、そろそろ頭がぼーっとしてきた。あまり浸かり過ぎて逆上せてもいけないともう上がることに。用意していた服に着替え、頭を拭きながらリビングへ。
「なる、上がったよ。」
「おっ、なあ、何が出た？」
「これ。」
「おー！可愛いやん！」
差し出された手のひらに先ほどのフィギュアを乗せる。すると彼は子どもみたいに満足げに笑って、そのフィギュアをテレビ台のところに置いた。
「あ、ご飯。ちょっと待っててな？」
「うん、先髪乾かしてくるね。」
「ちゃんと乾かしてくるんやで。」
「分かってるよ。」
洗面所でちゃんとヘアオイルもつけて髪を乾かす。ちゃんと毛先まで乾かして、櫛で梳かして。よし、大丈夫だろう。
「Aー？終わったー？」
「今行く。」
ダイニングからは美味しそうな匂いがしていた。なるせの得意料理、チャーハンである。一度私が美味しいと言ってから何かとあるとチャーハンを作ってくれるようになった。分かりやすい人だ。
「美味しい？」
「美味しい。」
「それは良かった。」
私の前に座り食べ進める私を見つめるなるせ。なんだか機嫌が良さそうだ。
「ところでさ、A。」
「なに？」
「さっき送ってきた男、なに？」
前言撤回、不機嫌な時は笑顔になるタイプだったの忘れてた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 924人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お茶呑み星人(プロフ) - nrちゃんの目からハイライト消えた姿になるのてぇてぇです、ありがてぇです。おじさんどうなっちゃうのかなわくわくすっぞ！ (5月7日 13時) (
レス) @page22 id: f23fab1da2 (このIDを非表示/違反報告)
ばおばぶ(プロフ) - いつもウキウキで読ませていただいております！(大好きです！)最後に最推しが！！出たので驚愕歓喜でクソデカ感情抱えながら大の字になっちゃいました！！！ありがとうございます:(っ ;ᾥ; c): (3月8日 21時) (レス) @page18 id: 5e815c05a6 (このIDを非表示/違反報告)
快晴(プロフ) - 凄い好きです！！！！更新待ってます🥂✨ (2月11日 23時) (レス) @page16 id: 3fba93f21d (このIDを非表示/違反報告)
宝石 - とっても面白くて大好きです!更新ふぁいとです！ (1月25日 19時) (レス) id: 81d1859980 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるた。 | 作成日時：2023年11月13日 0時
