吸血鬼さんと人間さん【kzh】

・(r) ページ23

葛葉くんの家を飛び出して50分。



泣きながら膝を抱えること40分。



ブーブーとなり続ける携帯がウザったくて、電源を切ってから20分。



ため息をつきながらクッションを抱きしめる。



馬鹿みたいに泣いて、馬鹿みたいに葛葉くんに会いたくて。



「っ…迎えにくらい、来なさいよ……ばか…」



葛葉くんは今、どう思ってるんだろう。



反省してるのかな。



もしかしたら、愛想尽かしてもうゲームしてるかも。



(お腹…痛いなぁ…)



いつもならお腹や背中を撫でてくれる手が、今はない。



もういっそ寝てしまおう。



そう思いベッドに潜ろうとすると、ガチャンッと玄関のドアが開いた音がした。



私の家の合鍵を持っているのは、一人しかいない。



「葛葉、くん…？」



キィ…と開かれるドア。



そこには見たことがない、初めましての女の人が立っていた。



「っ誰ですか！？」



「あ、ちょっ…ごめんなさい…！悪い人じゃないのよ…！」



赤い髪の女の人は焦ったように後ろを振り返る。



…後ろに、誰かいる？



「謝りたいって言うから連れてきたの」



「…？」



早く、と言われて女の人の後ろから出てきたのは、気まずそうな顔をした葛葉くんだった。



(葛葉くんだ…でも、誰？この女の人…。元カノ、とか…？)



今カノと喧嘩したから元カノに連絡、ってこと？



やだなぁ…そういうの…。



そう思って、お帰りください、と告げようと顔を上げると、目の前に葛葉くんの顔があった。



「…なに」



「…謝り、たくて」



「女の人連れてきて？」



「違っ…この人は…」



聞きたくない、と言うように耳を塞ぐ。



なんか、意識が朦朧としてきた。



お腹痛いし、もうヤダ。



「っA…！聞いて」



「……や、だ…」



「この人は…ドーラは、俺の母さん……みたいな、なんつーか、その…」



ドーラ…？



なんだか聞いたことがある名前だ。



葛葉くんの奥でキョロキョロとしながら立っている女の人を見る。



赤い髪で、角とかしっぽこそは無いけど、昔配信で見たことがある人にそっくりだ。



確か、なんだっけ……ド葛本社？とかいう。



「あー…ごめんね？急に葛葉から泣きそうな声で連絡あったから…」



「ちょっ、余計なこと言わなくていいから！」



ドーラさんは私の頭をゆっくりと撫でる。



その手が暖かくて、やけに落ち着いた。

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