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第二話:炎とは、熱いものである ページ9

夏油傑は、呪術師である。

彼の人間性はかなり問題があり、五条と並ぶクズと同級生に言われる程だ。

呪術師とはイカれた性格でなければやっていけない。

それは、呪術界にいれば誰しもが知る教訓だ。

そんな中、夏油傑は表面上はイカれているが、中身は比較的人間的な感情を持っていた。

誰にも理解されないような味の呪霊。

星漿体、天内理子の死。

五条悟の反転術式の取得。

後輩、灰原雄の命の危機。

九十九特級呪術師からの「非術師のいない世界」の提案。

そして、醜い非術師と、差別される呪術師の実態。

追い詰められていた。

何が正しいのかが、夏油は分からなかった。

弱者である非術師を助けるのが、強者である呪術師のあるべき姿だと思っていた。

今はそうとは思えない。

いつか、五条が正論が嫌いと言っていたのを、今はとても理解出来る。

嗚呼、やはり自分は彼より未熟で、弱いのだと。

今は、そんな些細なことでさえ酷く心を痛めた。

その前に目の前の猿を殺さなければ。

夏油傑は、全てを放棄することを考えた。

責任も、義務も、権利も。

目の前には、呪霊が見える双子と、それを差別し傷つける猿。

さて、早く終わらさなければ。

夏油がその手から呪霊を出そうとした。

出そうとした、はずなのだ。

彼の手には、呪霊ではなく見知った硬い手が乗っていた。

「夏油少年。君は今、何を思った?」

そういったのは、夏油が今最も嫌い、信頼を寄せていた特級怨霊、煉獄杏寿郎だった。

「.....離せ、呪霊ごときが話しかけるな。」

眉をひそめ、まるで汚物を見るように、夏油は煉獄に視線を向けた。

煉獄は動じない。それどころか、いつもつり上がっている眉を下げていた。

困ったような顔をした彼は、口を開いた。

「君は、君の一生はまだまだ続く。」

その意味は、夏油には理解できなかった。

「君が今、ここで決断したことはその長い長い生涯のたった一つの分岐点にしか満たないと思っているのかもしれない。

ただ、君が今決断した、選んだ道は間違いなく君の一生を間違ったものにしてしまう。

前を向き続けるのは辛い。ただ、俺は、人として最も辛いことは、人の心を失って死んでいくことだと思う。」

「どういう.....」

「俺は、鬼狩りとして、鬼殺隊の柱として鬼を斬ってきた。鬼となることで人は大切な記憶を失い、家族すらも食ってしまうような化け物となる。」

いつもは活気に満ち溢れた瞳が、揺れる。

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- 一話のよもやが鳴き声と間違われるのが面白くて笑っちゃいましたww 煉獄さんが言っているよもやってまさかって意味なんですけどね… (7月17日 15時) (レス) @page2 id: f2f05df21c (このIDを非表示/違反報告)
Zero(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみです! (2021年8月31日 23時) (レス) id: 6a558fa07f (このIDを非表示/違反報告)
極楽鳥華 - 最初の目覚めてから五条先生との会話に行くまでによもやしか言わない煉獄さん。いいかも...。更新楽しみにしてます。 (2021年1月22日 18時) (レス) id: f6d6f89938 (このIDを非表示/違反報告)
ネコマタさんのちょびひげ - あ、面白い……。煉獄さんと呪術廻戦のキャラがどう関わっていくのか楽しみです!! (2021年1月12日 17時) (レス) id: d3a88c7d37 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:結希 | 作成日時:2021年1月11日 0時

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