五十六枚目 ページ10
『あんまり驚かないんだね』
「驚く暇与えてくれなかったでしょ」
オビは苦笑いを浮かべる
「ね、どんな子だったの?」
『…聞きたいの?』
僕の問いに彼は僕の手を取って、そっと握った
「そりゃね。好きな人の事ですから」
『僕の話で、君が自由に飛ぶ翼を折られても?』
人の過去を聞くということはそういうことだ
僕は彼に心を許している。僕が作っている壁に扉を付けて開けられるようにしてしまえば、簡単に内部に足を踏み入れた人間を閉じ込めるための部屋になる
束縛のようなもの。だけど彼に束縛は似合わない
(こんな考え方が僕を天邪鬼にするんだろうな)
「いつ俺があんたに羽根を折られたって言った?寧ろ俺が折ろうとしてるかもよ?」
冗談めかしく言うオビの瞳までは、からかいの色がない
ほら、そんな顔をするから、僕はドアノブを回してしまう
『君ぐらいだよ。そんなこと言うの』
「俺だけにして欲しいね。こんなこと言わせるの」
オビは僕の手を引いて、イスに座らせてくれる
彼もその隣のイスに腰掛ける
『どこから話すか…さっきも言った通り、僕は捨て子だった。誕生日も祝ってもらえないぐらい両親から嫌われてたから、年齢は曖昧なんだ。ただ、巡る季節で歳を刻んでた』
「親は、いつ」
『7か8歳ぐらいまでは両親と一緒に暮らしてたよ』
ある日突然、タンバルンの山奥に捨てられた
捨てられた理由が思い浮かばないのは、両親を親だと思ったことがないからだ
顔が少し似ているだけの他人だと認識している
捨てられて、森を彷徨っていた時に人に拾われ、連れて来られた先は当時の山の獅子の暮らす村
戸惑いもしたけど、皆優しくてね。すぐ打ち解けられた
確か、武風とその奥さんが村に来たのもそのぐらいの時期だ
『だから、捨て子といっても暗い話が沢山あるわけじゃないし、悲観もしてない。寧ろ、捨てられたという事実を塗り潰すぐらいの楽しい思い出ばかりだ』
その後、武風達の間に子供…つまりは白雪が産まれた。彼女は覚えてないだろうけど、彼女は僕を慕ってくれてた
初めて芽生えた、守りたいと思う気持ちは白雪からもらった物
白雪が村を出て、祖父母の方へ引き取られてから、僕は段々と戦う事の全てを学び出した
村の皆総出で僕を鍛えてくれたよ。特に武風がノリノリでね。厳しかったけど、それもいい思い出
それから僕が15か16歳になった時、僕は国を出た
広い世界を自分の目で見たくてね
『そんな時に、イザナ殿下に出会った』
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あやや - いつも楽しみに読んでいます。これからも頑張ってください。応援しています。 (2016年3月25日 0時) (携帯から) (
レス) id: 4895b1970d (このIDを非表示/違反報告)
あおぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても素晴らしい文章に感動しています。これからも更新応援しています、頑張ってください。 (2016年3月17日 19時) (レス) id: 846b37e79f (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - わかなさん» ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます (2016年3月17日 11時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
わかな(プロフ) - 更新お疲れ様です！毎回楽しくてウハウハですｗ更新これからも頑張ってください！ (2016年3月17日 7時) (レス) id: d4ec265b43 (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - 沢山のコメントありがとうございます!!新作の更新はもう少し構想を練ってから更新したいと思っています! (2016年3月13日 1時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2016年3月4日 17時
