八十三枚目 ページ37
Side:Obi
一仕事終わって、俺とサクは屋根の上で一休み
トロウは家出人が逃げない様に中で縛っている所だ
欠伸を噛み締めてると、隣のサクもつられて小さく欠伸をした
「主達怒ってるだろうなぁ」
『毎度書き置き短いからだろ。これじゃあ僕まで怒られるんだけど』
「連帯責任ってことで」
ケラケラと笑って誤魔化すとサクは眉間に皺を寄せた後、呆れた顔をしてぽすっと俺の肩に頭を乗せる
「サク?」
『なに』
「いや、聞きたいのはこっちだって」
『別に?恋人に甘えちゃ悪い?』
少し恥ずかしいのか、頬を染めながら俺を見上げ、サクから放たれた言葉は完全に予想外だった
「サクはズルイ」
『そう?僕は、君こそズルイと思うけど」
僕の心を颯爽と盗んで行ったんだからね。とサクは言う
ほら、そういう所がズルイ
「サクは…」
『ん』
「…戦うことに抵抗はなかったのかい?」
思っていたことを聞いてみる
小柄で華奢な女の子が剣を取るという行為に戸惑いはなかったのか
ましてや一度大怪我を負ったのに
『戦うというより、守りたかった。ただ白雪を、僕に優しくしてくれた山の獅子を、イザナを、守りたかっただけ。そこに抵抗も何も無いんだ』
確かにそれで大怪我はしたけど、と苦笑する
でも彼女は俺と目を合わせて話すことをやめない
『それに、今は剣以外で守る術を持っているしね』
「絵を描いて、守る?」
『そう。僕は空想は描かない。目で見たものが全てだ』
「……だから、いつも絵が描き終わった後に隅に場所を書いてるのかい?」
サクは頷いて笑った
彼女の絵は他と違って、完成した後にペンで隅に描いたモデルの場所を書く
それは、この場所がこんなにも美しいのだと知らせる宣伝板にもなる
つまりは間接的にその場所を保護する
『…また僕の話ばかりだ。別にいいけど釈然としないな』
ムスッとした顔をする。拗ねたのかな
「前に言ったはずだけど?俺はサクの全部が知りたいって」
『僕も言っただろ?今の僕を見て欲しいって』
「過去を振り返りたがらないのは?」
聞くと彼女は渋る。けれど、ちゃんと言葉にしてくれた
『………老けた気になって、歳を感じる』
「……ぶふっ」
予想外の答えに思わず吹き出すと、彼女は顔を真っ赤にして怒った
『っ…だから嫌だったんだ…!!』
「ごめんごめん…まさか、そうくるとは…っ」
『馬鹿オビっ!!』
「ごめんってば」
年上の恋人は、時々幼くて可愛いったらないね
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あやや - いつも楽しみに読んでいます。これからも頑張ってください。応援しています。 (2016年3月25日 0時) (携帯から) (
レス) id: 4895b1970d (このIDを非表示/違反報告)
あおぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても素晴らしい文章に感動しています。これからも更新応援しています、頑張ってください。 (2016年3月17日 19時) (レス) id: 846b37e79f (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - わかなさん» ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます (2016年3月17日 11時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
わかな(プロフ) - 更新お疲れ様です！毎回楽しくてウハウハですｗ更新これからも頑張ってください！ (2016年3月17日 7時) (レス) id: d4ec265b43 (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - 沢山のコメントありがとうございます!!新作の更新はもう少し構想を練ってから更新したいと思っています! (2016年3月13日 1時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2016年3月4日 17時
