七十枚目 ページ24
服は濡れたままなので、替えの服を着る
身体の線に沿った、指先まであるインナーと、口が締まったハーフズボンとレギンス
髪は…面倒なのでリボンで結んで横に流してしまおう
これで有事があってもすぐに動けるだろう
『あ、でも不安だから小刀は装備しておこうかな…』
腕に小刀が入ったポーチを付ける
山の獅子になった時からずっと使っている小刀だ
オビに昔話をした様に、あの後、白雪にも全てを話した
白雪の両親のこと、武風が僕の育て親みたいなものであること、白雪と一緒に暮らしていた日のこと、自分の役職のこと
聞き終えた彼女は、"じゃあ私とサクは家族も同然だね"と笑って言った
それがどんなに嬉しくて、泣きそうだったか白雪は知らないだろう
(おっと。感傷に浸ってる場合じゃないな。ミツヒデが風邪引く)
外に出るとミツヒデが二階の椅子に座って待っていた
タオルで水分を取ったみたいだけど、まだ少し濡れている
『ミツヒデ』
「あ、サクさん。早かったですね」
『入って来ていいよ。後は僕が見張ってる』
手すりにもたれ掛かってそう言うと、ミツヒデは渋った
『……ミツヒデ、君が風邪を引いたら、それこそ王子が困るけどそれでもいいのかな』
「分かりました。…はぁ、サクさんには敵いませんね」
立ち上がって、彼は諦めた様にそう言う
王子を引き合いに出せば大抵ミツヒデは折れてくれる
主人第一な彼はこういう時楽だ
『そういえば、いつまでサク"さん"でいるの』
「えっ、でもその話はケリがついたんじゃ」
『あれは妥協したんだ。だいたい、身分が上のゼン王子は呼び捨てで、身分が君と同等の僕がさん付けなのはどう考えてもおかしい』
「それは貴方が年上だからで」
『年上だからって理由だけで敬称をつける、と。やっぱりゼン王子を呼び捨てにするのは命令だから動くのか…』
「ち、違いますって!!」
ぐぬぬという顔をするミツヒデ
彼は押しに弱い。今度こそ、呼び捨てをしてもらいたいところだ
親しい人に敬われたりするのは僕には似合わない
『じゃあ、僕が王子を呼び捨てにすれば、君は僕を呼び捨てにしてくれるね?』
「えぇっ」
『はい、じゃあそういうことだから。よろしくね?ミツヒデ』
無理くり押し込めて、ミツヒデを風呂へと送り出す
『……王子を呼び捨て、ねぇ』
自分で言っておいてなんだけど、出来るか?
僕のゼン王子呼びも癖と言えば癖だ
まあ、イザナ殿下とは砕けて話すことが常だから大丈夫だろう。多分
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 298人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやや - いつも楽しみに読んでいます。これからも頑張ってください。応援しています。 (2016年3月25日 0時) (携帯から) (
レス) id: 4895b1970d (このIDを非表示/違反報告)
あおぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても素晴らしい文章に感動しています。これからも更新応援しています、頑張ってください。 (2016年3月17日 19時) (レス) id: 846b37e79f (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - わかなさん» ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます (2016年3月17日 11時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
わかな(プロフ) - 更新お疲れ様です！毎回楽しくてウハウハですｗ更新これからも頑張ってください！ (2016年3月17日 7時) (レス) id: d4ec265b43 (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - 沢山のコメントありがとうございます!!新作の更新はもう少し構想を練ってから更新したいと思っています! (2016年3月13日 1時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春月 | 作成日時：2016年3月4日 17時
