六十九枚目 ページ23
『はぁー…あったかい』
肩まで浸かってホッと一息
冷えた身体を湯がじんわりと溶かしていくのが分かる
まるで凍らされた食べ物を解凍するような。喩えが悪い?そりゃ失礼
「あぁ、やっぱりここにいた」
『あ、白雪、木々』
少し遅れて、二人が入ってくる
『…失礼』
「わぁぁっ…!?サクっ、何してっ…!」
お湯の中なのを良いことに、僕は白雪の腰周りに触れる。肌がすべすべだなぁ。若いって強い
王子には一生かかって出来ないことを、女であるだけで簡単にできてしまうのだから、とても優越感がある
『白雪は細いね…けど、誘拐事件からロクに食べてないだろ?今日はきちんと食事を取りなよ』
「へっ…あぁ、うん。ありがとうサク」
「…白雪、良いように丸め込まれてるよ」
「え?」
『あぁ、ばれた』
──…?
──…!!
『ん?…声…男湯か?』
向こう側から声が聞こえてくる
この声は王子とオビだろうか。だとするとミツヒデは一人残ったのだろう。彼と木々は王子が居るとずっと任務だからな
「そんなわけで主、今、木々嬢とお嬢さんとサクも隣で風呂に入っているわけですが」
(…あの野良猫は何を言うんだか)
王子がまた叫んでいるのが聞こえる
こういう話題はあまりしないのだろうから、慣れていないのだろう
「木々さん達はこういう宿は時々使うんですか?」
「ゼンがお忍びで動き回る時はね」
「サクは?」
『旅してた時はしょっちゅうだよ。…そういえば、ゼン王子、昔は外にはあまり出なかったね?』
「そうだね。昔は城のあの大きな窓が檻みたいに見えてたらしいよ」
「檻ですか…それは抜け出し甲斐がありますね」
そんな事を言うのは白雪ぐらいなものだろう
この子は等身大のゼンを認めてくれている。本当に、二人が出会ってよかった
「白雪との付き合いも、長くなって来たね」
木々は微笑む。その表情を至近距離で見たせいか、白雪は赤面する
二人とも可愛いなぁと和んでいると
「じゃあ主。いっちょ、覗ける場所でも探しましょうか」
「やめろっ!!」
「やだなぁ、冗談ですよ冗談。あっはっはっ」
こういう時にこの聴力が恨めしくなるな
「お前、あまりふざけてるとサクが怒るぞ。この距離でも聞こえているだろうしな」
「いやいやまさか─…」
では、ご期待に応えて
『聞こえてるんだよ馬鹿猫!』
「え"っ」
「ほら見たことか」
「お、お姉さーん!?今のは冗談ですよ!」
慌てるオビの弁明を無視して、僕は風呂を出た
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あやや - いつも楽しみに読んでいます。これからも頑張ってください。応援しています。 (2016年3月25日 0時) (携帯から) (
レス) id: 4895b1970d (このIDを非表示/違反報告)
あおぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても素晴らしい文章に感動しています。これからも更新応援しています、頑張ってください。 (2016年3月17日 19時) (レス) id: 846b37e79f (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - わかなさん» ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます (2016年3月17日 11時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
わかな(プロフ) - 更新お疲れ様です！毎回楽しくてウハウハですｗ更新これからも頑張ってください！ (2016年3月17日 7時) (レス) id: d4ec265b43 (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - 沢山のコメントありがとうございます!!新作の更新はもう少し構想を練ってから更新したいと思っています! (2016年3月13日 1時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2016年3月4日 17時
