六十七枚目 ページ21
彼は僕を自分の方へ引き寄せて抱きしめ、ゼン王子を恨めしそうに見る
「楽しそうな声が聞こえるなと思ったら、仲良く踊ってる主人と恋人を見た時の俺の気持ち、分かってくれます?」
「知らんな。折角滅多に着飾らん姉君が着飾っているのに、壁の花にするには勿体ないと思っただけだ」
ゼン王子はオビが恨めしげに睨むのも笑顔でかわし、手摺に頬杖をつく
というか“姉君”、なんて、幼少の時以来の呼ばれ方だな。あれは…確か、そう、陛下がウィラント城に移られた後だったか
「主、流石に怒りますよ」
「はは。悪い。オビ、サクを連れて行って良いぞ。ただし、木々もミツヒデもサクと踊りたがっているから手短にな」
「嫌です」
『わっ』
オビはそう言って僕を抱き上げ、バルコニーに出て庭へ飛び降りる。程よく中の音楽が聞こえてくるぐらいの距離
腕の中から下ろされても沈黙が長く続いていて、居心地が悪い
『っ…!!?』
と、突然目の前の人物が動いたかと思えば、するりと太ももに感じる感触に思わず声をあげそうになる
『……オビ』
ギロリと睨みつける
けれど彼は知らん顔
「なぁんで一番に俺に見せてくれないのさ」
どうやら拗ねているらしい
『君は護衛の仕事が、っ!』
「ふぅん?」
つつ…と指先でまた、太ももを撫でてくる
『っ…ちょ、触らないでくれるかな…!』
「へぇ?どうして?」
『くすぐったい以外に何がある…ひっ…!』
オビは先程と一転して楽しそうな笑みを浮かべている。僕の反応を見て楽しんでるのが良く分かる
『…いい、加減に…!』
「いい加減に?なぁにサク」
『……』
全く、調子に乗るとすぐコレだ
さっきまでゼン王子に妬いて、拗ねていた彼は何処へやら
これは灸を据えないといけないか
「あれっ、怒った?」
『時と…』
「えっ」
『場所を考えろ、このド変態の野良猫がぁ!』
「えっ、ちょっ、何処から出したのその短剣…うおぉぉっ!?」
ーー
こうして、タンバルンへの出張は幕を閉じる
大勢の見送りと共に僕らは城を、国を出る
今回の件で確実にラジ王子の考え方は変わっただろう。今後、どの様な形で彼が国を導くのか楽しみだ
「サク」
『ん?』
「今度は城下に遊びに行こう!」
『……そうだね』
白雪の笑顔につられて、僕も微笑む
また今度。そんな日はもしかしたら案外近いのかもしれない
「オビ、どうしたんだ、その頬の傷」
「いやぁ…どうしたんでしょうねぇ。なんだと思います?主」
「俺が聞いてるんだが」
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あやや - いつも楽しみに読んでいます。これからも頑張ってください。応援しています。 (2016年3月25日 0時) (携帯から) (
レス) id: 4895b1970d (このIDを非表示/違反報告)
あおぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても素晴らしい文章に感動しています。これからも更新応援しています、頑張ってください。 (2016年3月17日 19時) (レス) id: 846b37e79f (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - わかなさん» ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます (2016年3月17日 11時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
わかな(プロフ) - 更新お疲れ様です！毎回楽しくてウハウハですｗ更新これからも頑張ってください！ (2016年3月17日 7時) (レス) id: d4ec265b43 (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - 沢山のコメントありがとうございます!!新作の更新はもう少し構想を練ってから更新したいと思っています! (2016年3月13日 1時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2016年3月4日 17時
