陸ノ章 �� ページ43
「まさか、狐狛嬢にそんな面白い体質があるなんてねぇ」
『黙って歩けんのか、うぬは』
ザクザクと雪を踏みしめる音を立てて、オビは狐狛を担ぎ上げたまま歩いていた
白雪の"言霊"のせいで動けなくなった狐狛を移動させていた
「でもなんでお嬢さんにダメって言われると動かなくなるんだい?」
『多分、姫と契約を交わしているせいじゃな。それが鎖になっておる』
「なんというか現実的じゃあないよね」
『そうじゃろうな……っと、もう動けるぞ』
「あれ?本当かい?」
オビは優しく狐狛を降ろす
狐狛は数度自分の手を開閉させて動けることを確認した
『うむ。五体満足じゃな』
「………」
『?オビ、どうかしたか?』
狐狛をじっと見つめたまま喋らないオビに首を傾げる
やがて口を開いたかと思えば
「狐狛嬢、あんた体調崩してるだろ」
『はっはっはっはっ、いやいや』
「笑って誤魔化してもだめ」
ピシャリと言われて狐狛は黙って目線を逸らす
薬剤師である白雪に気づかれないようにと気丈に振る舞っていた狐狛の体調をアッサリと見抜いてしまったオビに、彼女は驚きを隠せないでいた
『そんなに分かり易かったかのう…』
「主やお嬢さんは気づかないぐらいだと思うよ。俺は、ずっと狐狛嬢ばっか見てたから」
そう言って彼は狐狛の頬を手の甲で撫でる
「なんでだろうね。初めて会ったはずなのに、そんな気がしないなんて」
『会ったことがある、と言ったら?』
目を見開く彼に、狐狛はふっと笑っていつもの調子に戻る
『冗談じゃ。うぬが懐かしく感じるのは勝手じゃがな』
「…本当に、冗談?」
笑った彼女を見て、オビの脳裏に映ったのは一人の娘
自分と同じ仕事をしていた、顔を知らない娘
顔を知らないから、確信はない。けれどやはり目の前の彼女を見てその子を思い出すのは…
「狐ちゃん…?」
『……なんだ。もうわかってしまったか』
狐狛はオビに昔のあだ名を呼ばれクスクスと笑い、室内へ戻ろうと踵を返す
それをみて、ハッとオビは我に返った
「って狐狛嬢!休みなって。ていうか、やっぱりあの時の…!!」
『その話は、白雪を休ませてからじゃ』
狐狛は外廊下に佇むゼンの姿を見つけて、そう言った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 171人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Mizuna(プロフ) - 何度も読み返しても本当に面白いですね！続きが読みたいです！ (2023年1月30日 15時) (
レス) @page46 id: 0ed3c8b7be (このIDを非表示/違反報告)
まりねえ - 私も終わりなんて嫌です！ 頑張ってください。応援しています！ (2017年3月22日 22時) (レス) id: c914c93a5f (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - おわりなんてやですよ 頑張って下さい (2017年3月18日 10時) (レス) id: dcf699db89 (このIDを非表示/違反報告)
ヒナタ - おもしろいです！次の話も気になります！がんばってください！ (2016年9月24日 12時) (レス) id: a4a064b62f (このIDを非表示/違反報告)
つねさん(プロフ) - 犬夜○…？春月サンの作品すごくいいです大好きです頑張ってください！！ (2016年7月30日 23時) (レス) id: 45649277a8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春月 | 作成日時：2016年3月20日 11時
