九枚目 ページ11
『はぁ……』
思わず筆が止まる
ここ数日まともに絵がかけていない
それもこれもあの時のせいだ
『アホオビ…』
その原因の男に悪態をつく
(そもそも、あれはからかわれてただけだ。気にする必要なんてないはずだ)
告白まがいなことを言われた直後、ゼン王子と白雪が帰って来なければどうなっていたことやら
『気にしていたら負けだ…あんなものは忘れないと』
頭を振って目の前の絵に集中する
(僕は、好きになってもらえるような人間じゃ…ない)
そうだ
僕はそんな人間ではない
ーー
「お姉さん元気してた?」
例により、中庭に彼がやってくる
憎たらしい笑顔を浮かべて
『君、昨日も来てたでしょ。元気してたって聞き方おかしいだろ』
「………あっれ、もう立ち直ってる…」
『……ふぅん…やっぱりからかってたんだ。君ってタチ悪いね』
「………鈍感」
少し動揺する僕を見るのが楽しかったのだろう。予想通りでよかったと思う
冷ややかな目で見ているとオビが拗ねた顔で呟いたが、聞こえないフリをしといた
『とにかく君はおとなしく業務に戻ることだね。僕は王城開放の日の準備で忙しいんだ』
「そういえばいつもはキャンバスなのに、今日は小さい紙だね」
『露店の一店舗として僕も売りに出るんだ。僕の絵を欲しいっていう物好きが結構いるからね』
毎年、楽しみにしていると言ってくれる人たちがいる。
ただ居場所を探すために始めた画家という仕事は、今やイザナ殿下に認められて、多くの人たちが僕の絵で笑顔になって、一生大切にすると言ってくれる。今やなくてはならない僕の職業
「なるほど、それで小さい紙に一枚ずつ絵を描いてるわけか」
『そういうこと。ほら、もう帰りなよ』
「いやいや、俺今休憩時間なんで。構ってよ、お姉さん」
『僕は一応仕事中だ』
オビから目を外して、絵を描くことに集中する
だけど、ぽとっと何かが目の前に落ちてきた
紐のような長い物体がうごうごと紙を這うのを見て、背筋がゾッとする
『ひっ…』
「お姉さん?どうかし…『に"ゃあああああッ!!?』えっ、おわぁぁっ?!」
紙をぶちまけて、オビへと突進する
バランスが取れなかったオビは僕と共にそのまま倒れる
落ちて来たのは名前を出すのも嫌だが、ムカデだ
本当、死ぬほどやめてほしい
『なんで僕の目の前に落ちるんだよばかッ!!もーやだっ!』
「ちょ、お姉さん!?何があったの…!!ていうかこの状態わかってる!?」
混乱した僕にオビの声は届いていなかった
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つねさん(プロフ) - 1話目で菱田さん！！！！って叫びました。この作品好きすぎて辛いです涙出てきました応援してます！！！ (2016年7月29日 23時) (
レス) id: 45649277a8 (このIDを非表示/違反報告)
りりか♪ - おもしろいです！ (2016年5月6日 23時) (レス) id: 16d26bbe18 (このIDを非表示/違反報告)
ノンナ(プロフ) - めいこいですね！わかります！ (2016年3月21日 17時) (レス) id: 62b81bdc65 (このIDを非表示/違反報告)
梛(プロフ) - 凄く面白いです！！主人公ちゃん可愛いですね！これからも楽しみにしています。頑張ってください！ (2016年2月17日 0時) (レス) id: 63f277ad3e (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - 零雨さん» コメントありがとうございます。誤字指定ありがとうございます!確かにおかしかったですね(笑) (2016年2月12日 21時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2016年1月26日 18時
