【スタミュ】黒崎蘭丸の従兄弟が綾薙に居るⅥ (ページ37)

今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:45,448 hit

合同稽古ページ37

賑やかな朝食も終わり、合同稽古が本格的に始まる
メインの華桜会はそのままにシーンごとに役をローテーションしていく方式となった
元教育者との共演ということで育成枠の生徒たちは少し緊張した面持ちで稽古場に向かう
哀葉はというと、あくびを噛みしめながらのそのそと歩いていた。その隣には当然のように虎石がいる

「緊張感ねえなぁ…」

『俺、ただの手伝いだし。後、誰かのせいで寝不足続きだし、まだ体怠いし』

「はいはい、悪かったよ。これでも最大限優しくしたんだけどな」

『…それは、分かってる』

他の人間が聞けば、察しのいい人間なら気付くかもしれない内容ではあるが、幸い喧騒に紛れている

『和泉が、優しいなんて、身をもって知ってるもん』

ぼそりと呟いた言葉を確実に拾った虎石は目頭を押さえる他なかった
ここが廊下で、稽古前でなければ、何をしていたか分かったもんじゃない

「…体、ほんとに平気か?」

そういう感情を押し込めて、再度聞くと哀葉はいつもの笑顔を見せる

『もう平気。さっきのは、お前をからかう方便だよ』

「ならいい。最後の方、結構無理させたのは事実だし」

『っ、思い出させるような事言うな、馬鹿』

「ははっ、それは失礼しました」

稽古時刻となり、合同稽古が開始する
ランバート役柊翼、アレクシス役鳳樹、エディ役暁鏡司、ルーカス役楪＝クリスチアン＝リオン、クリフ役漣朔也。華桜会5人の実力は後輩たちの想像を超えていた
特に、楪の役どころは目を引くだろう。彼とは全くの正反対の性格のキャラクターを演じ、きっちりと役を理解している

そんな中、憐みの瞳を向けられる役者が一名いた。星谷だ
彼は、この合同稽古に参加はせず、柊の補佐役として付くことになった
普通ならば、この時点でこの対応というのは役を勝ち取れない事を意味するようなもので、彼らはそう捉えるのが普通だ

一体どのくらいの人間が、本当の意図を理解しているのだろうか

(随分と、思い切ったことするよなぁ…)

星谷は一言でいえばシンデレラ。今はまだ灰被りの貧しいヒロイン。けれどその時が来れば、彼は王子の手を取る唯一の姫となる

『楽しみだ』

「哀葉、ディアローグの伴奏で入れるかい?」

『はーい』

鳳に呼ばれ、哀葉はピアノの前に座る。遥斗が楽譜を渡してくれるが、彼女には必要がない

『大丈夫です。遥斗さん。暗記してるので』