【スタミュ】黒崎蘭丸の従兄弟が綾薙に居るⅥ (ページ48)

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ワガママふたりページ48

『はい、お待たせ。哀葉ちゃん特製ふわとろオムライス』

ことり、と置かれた皿から暖かな湯気が立ち込める
最早虎石の舌にも慣れ親しんだ、哀葉のオムライス
否応なしに腹の虫が悲鳴を上げる

「わりぃな。我儘言って」

『今全力でボケたのにスルーされた……ま、お安い御用ですよ。得意料理の一つだからな』

虎石の向かい…ではなく、隣に座った哀葉は手を合わせて食べ始める
結果発表があった後、虎石から夕飯のリクエストが言い渡された。いつもは、哀葉が虎石の好みとバランスを考えて作っている為に、アレが食べたいコレが食べたい。という我儘は彼にしては至極珍しかった

『悔しい?』

「いや…やりきったって感じだし、悔いはねえよ。けど、なんか、終わったんだなーって思ったら無性にお前のオムライスが食べたくなった」

悔いはない。という割に、その表情は暗い。けれど、嘘をついているわけでもない
どちらも、本心なのだ

『……そっか。それは、光栄かな』

だから哀葉は相槌だけを打って、慰めの言葉はかけなかった。下手なことを言って、気持ちの整理を害するのはお門違いだから

『和泉、私も我儘言っていい?』

「ん?おう。寧ろお前はもうちょっと言ってくんね」

哀葉は一度手を止めて、虎石を見据える
虎石も見つめ返した

『考えとく。…今日、このまま泊まってくれませんか?』

「……お前も、珍しいな」

甘えるような言葉に今度は虎石が面食らう

『今日で、おしまいだから。和泉と長い時間一緒に過ごせるの。寮が一緒なのに何言ってんだって感じだけど』

これはもともと、言う事が決定していた事だ。虎石が先に我儘を言ったことで、順序が逆になっしまったのだが

「…かわいーこと言ってくれんじゃん。俺と会えなくなるのが寂しい?子猫ちゃん」

『寂しがりにさせたのは誰だろうなー』

「はは、俺か」

いつもの調子に戻ってきた虎石に、哀葉はひっそりとほくそ笑む
彼女の作戦勝ち…だけれども、少し焚きつけ過ぎた

「ワガママついでに、一緒に風呂入ろうぜ」

『それはダメ』

(調子に乗らせ過ぎた)

全く。傷心していたかと思って慰めればこれだ。とため息をつきたくなる

「ありがとな、哀葉」

『!…さて、何のことやら』

お礼はキスで。そういって、虎石は唇を重ねる
幾回も繰り返されているキスは、今日はしょっぱかった