【アルスラーン戦記】月と詩を君と【改訂版】 (ページ46)

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十四ページ46

ひとまず、身支度を整えるため部屋に戻ってきた私とギーヴ殿は外の事を部屋の三人に共有をした。ナルサスは既に策を弄しているらしい。相変わらず仕事が早い。

『しかしまあ、ホディールもよくやる。こちらには地上最強とまで言われる黒衣の騎士がいるというのになあ』
「束になればなんとかなると思ったのだろうよ」
ギーヴ殿が手の当て布を巻きながら口を挟んできた。
『ここの兵が束になっても、敵わんだろうよ。万騎長、ひいては騎士の中の騎士の名は伊達ではない』
ダリューン一人で一体どれほどの兵になるのか。考えるだけ無駄だろうが、余裕で一万はなんだかんだ相手しきってしまいそうだ。
毒針を腕の収納場所に仕舞い、次に短剣を腰の鞘に納める。てきぱきと寝台に広がる武器を仕舞っていると、その様子をエラムがじっと見ていた。
『どうしたんだいエラム』
「あぁ、いえ…ペルール様は一体幾つ武器をお持ちなのかと…」
エラムの素朴な疑問に他の三人も食いついた。
確かに普通の武人が持つものより多少多いとは思うけれど、そんなに驚くほどではない。
腕力に自信があれど、それは女の範疇に過ぎない。小柄な体では限界がある。だから私は、手数を増やした。その結果がこれだ。
『剣、弓、針、短剣、鎖鎌、毒薬、銃。だね。持ち歩いているのは』
「まだあるんですか？」
『あと残りの細剣、組み立て式の槍、大剣とかの場所かさばるものはシャビニカに積んである』
「えっそんなにですか！？重くないんでしょうか…」
『慣れているからな』
けろりと答えるとエラムははー…と寝台に置いてある私の武器を見ていた。
その隣のギーヴ殿がこれは？と一つの武器を指さした。
『それは銃だ。渡来品で、こちらでは扱いのないものだ』
「使い道は？」
『飛び道具といったところかな。変に弄るなよ？暴発しても知らんぞ』
「随分と危ないものを持ってるなあ！」
ギーヴ殿は嫌そうに距離をとる。実際は引き金を引かなければ発砲することもないけれど、まあ危険なことには変わりないし、この国にはないものだし、用心するに越したことはない。
まあ、最後の切り札ってやつだろうか。
「ペルール様は細身に見えるのに、いろいろお持ちなのですね」
「だろうな。だが、コイツは武器以外に重いものを持っているからな」
ダリューンは笑いながら私を見る。エラムはわからず首を傾げた。